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普段は近所のジムに通うだけだったクライミングやボルダリングも、続けているうちに行動範囲が広がっていきます。出張先で1回だけ地元のジムに寄ってみたい、連休を使って有名な外岩エリアに合宿に行きたい、海外旅行のついでに現地のクライミングジムを覗いてみたい——そんな場面が増えてくると、これまで意識してこなかった「移動を伴う荷造り」という壁にぶつかります。普段のジムバッグにシューズとチョークバッグを放り込んで自転車や電車で向かうのとはわけが違い、スーツケースやダッフルバッグに他の旅行用品と一緒に詰め、場合によっては飛行機に預けたり機内に持ち込んだりする必要が出てくるからです。チョークの粉が衣類ケースの中で舞ってしまった、預け荷物が規定の重量をわずかに超えて追加料金を取られた、チョークバッグが検査でひっかかって足止めを食った——クライミングを続けている人のSNSやブログでは、こうした「移動時ならでは」の失敗談が意外と多く語られています。この記事では、日常のジム通いバッグの選び方ではなく、宿泊を伴う移動でクライミング用品をどう荷造りするかにしぼって、注意すべきポイントを整理しました。あわせて、実際に選ばれやすい実在の関連アイテム4点も紹介します。
この記事でわかること
- なぜ「移動を伴う荷造り」は日常のジム通いと勝手が違うのか
- チョークの粉漏れを防ぐ — 「隔離」の発想を持つ
- 預け荷物の重量オーバーを防ぐ — クライミング用品は「重い」
- 「預け荷物用」と「機内持ち込み用」で仕分けの基準を変える
- ダッフルバッグかスーツケースか — クライミング用品との相性
- TSAロックの基礎知識 — 施錠したまま預けられる仕組み
旅行・遠征に役立つ実在アイテム4選
ここからは、実際に移動を伴うクライミングの荷造りで候補になりやすい実在の商品を4点紹介します。いずれも既に紹介した「大容量ダッフル」「チョーク・汗ウェアの隔離」「TSAロック」「現地用サブバッグ」という4つの役割に対応する形で選びました。価格情報は記事作成時点で確認したものです。変わっていることもあります。購入前に商品ページで最新の価格・在庫・カラーを確認してください。
4点を役割で整理すると、BCダッフルXLは「外側の大きな入れ物」、ブラックホールキューブは「ダッフル内でのチョーク・汗ウェアの隔離」、TSAロックは「施錠の安心感」、メイフライパック22は「現地での身軽な移動」という、それぞれ異なる役割を担っています。すべてを一度に揃える必要はなく、自分の移動スタイルに応じて必要なものから揃えていくのがおすすめです。
国内出張のついでにジムに1回寄る程度であれば、普段のジムバッグにチョーク隔離用のキューブを1つ足すだけでも十分効果があります。一方、ロープを含む装備一式を持って海外の外岩に合宿に行くようなケースでは、大容量ダッフル・隔離用キューブ・TSAロック・現地用サブバッグの4つがそれぞれ役立つ場面が出てきます。自分がこれから行く旅のスタイルに、どの役割が必要かを当てはめて考えてみてください。

THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)BCダッフル XL ブラック NM82365-K
参考価格26,310円
1986年に「ギア類を運ぶ」ことを目的として誕生したベースキャンプダッフルの136L・XLサイズ。防水性・耐摩耗性に優れたTPEファブリックラミネート素材を採用し、重量のある登攀ギアや不揃いな荷物を気にせず詰め込める、多くの遠征隊に愛用されてきたロングセラーモデルです。
ここが良い
- D字型に大きく開くジッパー構造で、荷物の出し入れがしやすい
- ロープや金属ギアなど重量のある不揃いな荷物を気にせず詰め込める耐摩耗性の高い生地
- ショルダーハーネスで背負って運べるため、未舗装のアプローチでも扱いやすい
注意点
- 136Lは合宿・長期遠征向けの大容量サイズで、短期の出張利用にはやや大きい
- 重さ約2.1kgと、空のダッフル自体の重量も預け荷物の重量計算に含める必要がある
patagonia(パタゴニア)Black Hole Cube 6L ブラックホールキューブ 49367
参考価格9,000円
クラムシェル型に大きく開き、内部にジッパー式のメッシュ間仕切りを備えた収納キューブ。実証済みのブラックホール素材と同じ防水性・耐久性を持ち、ヘッドランプやツール類、汗をかいたウェアの整頓に便利なサイズ感です。ダッフル内でチョーク・シューズ用の荷物を隔離する用途にも使いやすいアイテムです。
ここが良い
- クラムシェル型で大きく開くため、シューズやチョークバッグをまとめて出し入れしやすい
- ダッフルバッグの中で他の衣類と分けて収納でき、チョークの粉やゴムのにおい移りを抑えやすい
- ジムバッグとしても単体で使い回せるちょうどよいサイズ感
注意点
- 完全防水ではなく、チョークの粉漏れを完全に防ぐものではない(密閉袋との併用がおすすめ)
- 6Lはシューズ+チョークバッグ程度の容量で、ウェア一式まではまとめて入りきらない

CONCISE(コンサイス/TTC)3桁ダイヤル式 TSAロック TL-06T
5.00(1件のレビュー)
参考価格1,760円
海外旅行でTSAロックに対応した空港であれば、施錠したままカバンを預けられるダイヤル式の南京錠。任意の3桁の番号に設定できるシンプルな構造で、ダッフルバッグのジッパーの引き手に取り付けて使用します。旅行用品を専門に扱うコンサイス(TTC)ブランドの正規販売品です。
ここが良い
- ダイヤル式で鍵を持ち歩く必要がなく、暗証番号は自分で自由に設定できる
- 重量約65gと軽量で、預け荷物の重量にほとんど影響しない
- 旅行用品専門ブランドの正規販売品で、コストを抑えて用意しやすい価格帯
注意点
- TSAロックはアメリカの制度に基づくものであり、対応していない国・空港では通常の南京錠と同じ扱いになる
- ダッフルバッグ側にジッパーの引き手(南京錠を通せる穴)がない場合は使用できない

THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)メイフライパック22 NM62376
参考価格9,460円
40デニールのダブルリップストップナイロンを使用した、ポケッタブル仕様の軽量中型デイパック。折りたたんで専用のポケットに収納できるため、大きなダッフルバッグの中に忍ばせておき、現地に着いてからその日使うギアだけを入れて身軽に移動する「サブザック」として使いやすいモデルです。
ここが良い
- 専用ポケットに折りたためるため、行きの荷物の中でほとんどかさばらない
- 約200gと軽量で、現地でその日使うシューズ・チョークバッグ・水筒を入れて身軽に移動できる
- サイドメッシュポケットとコンプレッションベルトで、水筒やタオルの出し入れがしやすい
注意点
- 22Lはロープなど大型ギアを収納する容量ではなく、あくまで日帰り分のサブバッグ用途
- パッカブル仕様のため生地は薄めで、フル装備の外岩ギアを詰めての酷使には向かない
■ スペック比較表
| 商品 | THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)BC… | CONCISE(コンサイス/TTC)3桁ダイヤル式 TS… | THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)メイ… | |
|---|---|---|---|---|
| 参考価格 | 26,310円 | 9,000円 | 1,760円 | 9,460円 |
| 購入 | ||||
| サイズ | H75.5×W45cm | 横約18cm×縦約28cm×マチ約11cm | — | H47×W27×D16cm |
| 容量 | 136L | 約6L | — | 22L |
| 重さ | 約2,120g | — | — | — |
| 素材 | 1000DTPEファブリックラミネート(リサイクルポリエステル100%)・840Dリサイクルナイロン | リサイクルポリエステル100% | — | 40Dダブルリップストップナイロン・100Dマットツイルリップストップナイロン |
| 機能 | 背負えるショルダーハーネス/D字型ジッパーオープニング/コンプレッションストラップ×4本/収納用メッシュバッグ付属 | — | — | エアメッシュショルダーハーネス/収納式ウエストベルト/サイドメッシュポケット/パッカブル仕様 |
| 重量 | — | 約190g | 約65g | 約200g |
| 仕様 | — | メイン開閉ファスナー/内側メッシュポケット×2 | 3桁ダイヤル式・TSAロック対応 | — |
| 品番 | — | — | TL-06T | — |
| サイズ(吊を除く) | — | — | 約H40×W32×D13mm | — |
| 本体素材 | — | — | 亜鉛合金(吊はスチール) | — |
※ 表は横にスクロールできます。仕様は販売ページの記載にもとづく目安です。
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なぜ「移動を伴う荷造り」は日常のジム通いと勝手が違うのか
普段のジム通いでは、シューズとチョークバッグ、タオル、着替えをバックパックに入れて、行って帰ってくるだけです。多少荷物が雑に詰まっていても、その日のうちに家に戻れば問題は解決します。ところが、宿泊を伴う移動になると事情が変わります。荷物は数日間、スーツケースやダッフルバッグの中に入れっぱなしになり、他の衣類や電子機器、洗面用具と長時間同じ空間で過ごすことになります。
まず問題になりやすいのがチョーク(炭酸マグネシウム)の粉です。ジムバッグの中でチョークバッグの口が多少緩んでも、その日のうちに洗濯すれば大きな問題にはなりません。しかし旅行かばんの中で数日間過ごすとなると、粉が衣類やパスポートケース、充電器のコード類にまで入り込み、白い粉まみれになってから気づくというケースが後を絶ちません。
次に、飛行機を使う移動では「重量」という新しい制約が生まれます。国内線・国際線を問わず、預け荷物にも機内持ち込み手荷物にも重量の上限が定められており、これを超えると超過料金を請求されます。クライミング用品はロープや金属製のカラビナ・クイックドローなど、体積の割に重いアイテムが多く、旅行用の衣類や日用品と一緒に詰めると、思っていたより早く重量の上限に達してしまいます。
さらに、チョークや金属製ギアには機内持ち込みに関する制約もあります。粉末状のチョークは保安検査でX線検査の対象になりやすく、量や見た目によっては別途確認を求められることがあります。カラビナやヌンチャクなどの金属製クライミングギアも、機内持ち込み手荷物としては制限される場合があり、基本的には預け荷物に入れる前提で考える必要があります。日常のジム通いでは意識する機会のなかったこうしたルールが、移動を伴う瞬間から急に関わってくるのです。
これらはどれも、知ってさえいれば防げる小さなつまずきです。逆に言えば、知らずに現地へ向かうと、空港のカウンターで慌てて荷物を詰め替えたり、現地に着いてから衣類にチョークの粉が付いていることに気づいてがっかりしたりする原因になります。この記事では、こうした「移動ならでは」の落とし穴を一つずつ確認しながら、荷造りの考え方を整理していきます。
この記事の対象
この記事は、宿泊を伴う移動(出張・旅行・遠征・合宿)でクライミング用品を持ち運ぶ場面を対象にしています。自宅から近所のジムへ日常的に通う際の荷物の入れ方については、別記事「クライミングジムバッグの選び方」で扱っています。また、ロープやクイックドローなど外岩用の装備一式を運ぶギアバッグの選び方も別記事のテーマです。
チョークの粉漏れを防ぐ — 「隔離」の発想を持つ
チョークバッグの口をしっかり閉じているつもりでも、旅行かばんの中で荷物同士が押し合ったり、飛行機の荷物室で振動を受けたりするうちに、わずかな隙間から粉が漏れ出すことがあります。これを完全にゼロにするのは難しいため、「漏れることを前提に、被害が広がらないようにする」という発想に切り替えるのが現実的です。
具体的には、チョークバッグ本体をジップロックのような密閉できる袋にもう一段包んでから、旅行用の衣類収納ケース(パッキングキューブ)に入れる、という二重の対策が効果的です。パッキングキューブは本来、旅行用の衣類を種類ごとに小分けするための袋ですが、チョーク・シューズ・汗をかいたウェアなど「他の荷物から隔離しておきたいもの」をひとまとめにする用途にも向いています。抗菌加工が施された製品であれば、汗のにおいがこもりにくいというメリットもあります。
シューズについても同様です。クライミングシューズのラバーソールは、ジムの床の埃や自分の汗を吸っており、他の衣類と密着した状態が数日間続くと、ゴム特有のにおいが移ってしまうことがあります。シューズ専用、あるいはチョークと共用のキューブに分けて収納し、できれば通気性のあるメッシュ素材のケースを選ぶと、密閉した袋よりも乾きやすく、においがこもりにくくなります。
もう一つ見落とされがちなのが、「圧縮」の使い分けです。パッキングキューブの中には、ジッパーを二段階で閉じることでかさを圧縮できるタイプがあります。衣類の圧縮には便利な機能ですが、チョークバッグを強く圧縮すると、内部の粉が押し出されて漏れやすくなることがあります。チョーク類は圧縮せずに緩やかに収納し、衣類側だけ圧縮機能を使う、という使い分けを意識すると失敗しにくくなります。
検査で止められないために
空港の保安検査で、チョークバッグやブロックチョークがX線検査の画面上で不審な粉末に見え、追加確認を求められることがあります。特に海外の空港ではこの傾向が強いとされています。機内持ち込みにする場合は、透明な袋に入れておく、量を少なめにしておくなど、検査で説明しやすい状態にしておくと余計な足止めを避けやすくなります。心配な場合は、チョーク類は預け荷物に入れてしまうのが最も確実です。
預け荷物の重量オーバーを防ぐ — クライミング用品は「重い」
国内線のエコノミークラスでは預け荷物1個あたり20kg前後、LCC(格安航空会社)ではさらに軽い15kg前後が上限になっていることが多く、航空会社や運賃種別によって細かく異なります。クライミング用品、特にロープやカラビナ・クイックドローなどの金属製ギアは、見た目のかさばりに対して重量がかなりあるため、旅行用の衣類と一緒に詰めるとあっという間に上限に近づいてしまいます。
たとえば、シングルロープ1本でも重量は数kgになりますし、ハーネスやヘルメット、クイックドロー一式を合わせるとそれだけで数kgに達します。ジム利用が中心でロープを持ち運ばない場合でも、クライミングシューズ(ソールにゴムを使っているため見た目より重い)、チョークバッグ、フィンガーテープ、着替えのクライミングウェアなどを合計すると、思ったより早く重量がかさんでいきます。
対策としてまず有効なのは、出発前に自宅で荷物全体を量ってみることです。キッチン用のスケールでは大きな荷物を量れないため、荷物を持ち上げて重さを表示する吊り下げ式の携帯用スケール(ラゲッジスケール)があると、空港に行く前の段階で重量オーバーに気づくことができます。空港のカウンターで初めて重量超過に気づくと、その場で荷物を詰め替えたり、追加料金を払ったりする羽目になります。
もう一つのポイントは、行き帰りで荷物の重さが変わることを見込んでおくことです。行きは新品同様だったチョークが減っている一方で、現地で買ったグッズやお土産が増えていたり、汗を吸ったウェアが乾ききらないまま詰められていたりすると、帰りの荷物のほうが重くなっているケースも珍しくありません。行きの時点で上限ぎりぎりまで荷物を詰めてしまうと、帰りに超過料金が発生しやすくなるため、行きは多少余裕を持たせておくのが無難です。
複数人でクライミング合宿に行く場合は、ロープやクイックドローなど共有できる装備を1人がまとめて持つのではなく、参加者で分担して荷物に振り分けるという方法も有効です。1つのダッフルバッグに集中させるより、複数のバッグに分散させたほうが、それぞれの重量上限に収まりやすくなります。
「預け荷物用」と「機内持ち込み用」で仕分けの基準を変える
飛行機を使う移動では、荷物を「預け荷物(チェックインバゲージ)」と「機内持ち込み手荷物(キャリーオン)」の2つに分けて考える必要があります。この仕分けを事前にしておくかどうかで、空港でのスムーズさがかなり変わります。
■ 預け荷物に入れるべきもの
カラビナ、クイックドロー、ヌンチャク、ビレイデバイスなど刃物に準ずる扱いを受けやすい金属製の登攀ギア、ロープ、ヘルメット、大きめのチョークブロックなど。金属製のギアは機内持ち込みでは制限を受けやすいため、基本的にこちらへまとめておくのが安全です。
■ 機内持ち込みにしても良いもの
クライミングシューズ(1〜2足程度)、フィンガーテープ、ハンドクリームなどの保湿用品(液体量の上限に注意)、モバイルバッテリー(預け荷物ではなく機内持ち込みが原則)。預け荷物が万一ロストバゲージ(行方不明)になった場合に備えて、シューズだけは機内持ち込み側に入れておくと、荷物が届かなくても最低限クライミングができる、という考え方もあります。
■ 判断に迷いやすいもの
液体チョーク(リキッドチョーク)は、機内持ち込みの液体量規定(多くの場合100ml以下の容器)に引っかかることがあります。粉末チョークも前述の通り検査で確認を求められることがあるため、量が多い場合や心配な場合は預け荷物側にまとめるのが無難です。
航空会社・国によってルールは異なる
ここで紹介した基準はあくまで一般的な目安です。実際の制限は航空会社や就航国によって細かく異なり、時期によって変更されることもあります。特に海外の空港を利用する場合は、出発前に利用する航空会社の公式サイトで、預け荷物・機内持ち込みそれぞれの重量制限とルールを必ず確認してください。
ダッフルバッグかスーツケースか — クライミング用品との相性
クライミング用品をまとめて運ぶ「外側の入れ物」としては、キャスター付きのハードスーツケースと、持ち手やショルダーストラップで運ぶソフトタイプのダッフルバッグの、大きく2つの選択肢があります。それぞれに向き不向きがあります。
ハードスーツケースは、内部が仕切られていて衣類をきれいに収納しやすく、キャスターで転がして移動できるという利点があります。ただし、内部の形が決まっているため、ロープのように丸くかさばる荷物や、ヘルメットのように潰れると困る荷物を詰めると、隙間が生まれやすくなります。また、四角い箱の中に無理やり荷物を詰め込むと、閉まりが甘くなったり破損したりするリスクもあります。
一方、ダッフルバッグ(特に大容量のソフトタイプ)は、生地が柔らかく伸びるため、ロープや丸めたウェアなど不定形な荷物を隙間なく詰め込みやすいという特徴があります。もともと登山隊のギア輸送用に開発された経緯を持つモデルも多く、耐摩耗性の高い生地や、荷揚げしやすいハンドルなど、クライミング・登山用品を運ぶことを前提とした設計になっているものが少なくありません。空港のベルトコンベアやカウンターで多少手荒に扱われても、型崩れしにくいという耐久面のメリットもあります。
外岩へのアプローチで、駐車場から岩場まで荷物を背負って歩く必要がある場合は、ショルダーハーネス(背負い用のストラップ)が付いたダッフルバッグを選ぶと、キャスターの効かない未舗装路でも運びやすくなります。逆に、空港と宿泊先の移動が舗装路・屋内中心で、ロープなどの大型ギアを持たないジム中心の旅行であれば、キャスター付きのスーツケースでも大きな問題はありません。自分の移動ルートに未舗装路や階段が含まれるかどうかを、選ぶ前に思い浮かべてみるとよいでしょう。
TSAロックの基礎知識 — 施錠したまま預けられる仕組み
海外、特にアメリカを発着・経由する便を利用する場合、預け荷物には保安検査のために鍵を開けられる可能性があります。このとき、通常の南京錠をかけていると、検査官によって鍵が壊されてしまうことがあります。これを防ぐためにあるのが「TSAロック」です。
TSAロックは、アメリカの運輸保安局(TSA)が認めた特殊な構造を持つ鍵で、専用の工具を持つ検査官であれば、利用者が設定した暗証番号やダイヤルを変更することなく荷物を開けて検査し、再び施錠することができます。対応国の空港であれば、荷物を開けられることなく、かつ壊されることもなく検査を受けられるというメリットがあります。TSAロックの機能が搭載されたスーツケース自体も多く販売されていますが、ダッフルバッグやソフトケースの場合は、ファスナーの引き手に取り付けられる南京錠タイプのTSAロックを別途用意する必要があります。
クライミング用のダッフルバッグは、スーツケースのように鍵穴が内蔵されていないことがほとんどです。ジッパーの引き手に南京錠タイプのTSAロックを取り付けることで、施錠したまま預けられるようになります。3桁や4桁のダイヤル式が主流で、自分で好きな番号に設定できるため、南京錠の鍵を持ち歩く必要がないという利点もあります。
注意点として、TSAロックはあくまで「アメリカの保安検査に対応した」規格です。日本国内の移動や、TSA制度に対応していない国の空港では、通常の南京錠と同じように機能しますが、その国の保安検査手順によっては、TSAロックであっても壊されてしまう可能性がゼロではありません。行き先によって過信しすぎないことも大切です。
現地での「サブバッグ」を1つ用意しておく
大きなダッフルバッグやスーツケースは、宿泊先に置いたまま移動することが多く、現地のジムや外岩に向かうときにそのまま持ち歩くのは現実的ではありません。そこで役立つのが、折りたたんでコンパクトに収納できる「パッカブルタイプ」のサブバッグです。
パッカブルタイプのデイパックは、使わないときは専用の収納袋に折りたたんでしまえるため、行きの荷物の中にかさばらずに忍ばせておくことができます。現地に着いてからは、その日使うシューズ・チョークバッグ・タオル・水筒だけを入れて、身軽な状態で現地のジムや岩場に向かうことができます。宿泊先とジムの往復に大きなダッフルバッグごと持ち歩く必要がなくなるため、特に電車やバスでの移動が多い旅行スタイルでは重宝します。
サブバッグを選ぶときのポイントは、22L前後の中型サイズであることです。日帰りでその日使う分のギアだけを入れるには十分な容量がありつつ、大きすぎて持て余すこともないサイズ感です。また、両サイドにメッシュポケットやコンプレッションベルトが付いているタイプであれば、水筒を差し込んだり、汗をかいたタオルを一時的に外側にまとめておいたりする際に便利です。
なお、サブバッグはクライミング旅行専用に新しく買う必要はありません。すでに普段使いのパッカブルバッグを持っている場合は、それを流用しても問題ありません。ポイントは「大きなダッフル・スーツケースの中に、折りたためる小さな鞄を1つ忍ばせておく」という発想そのものにあります。
シーン別・持ち物チェックリストの考え方
最後に、移動のスタイル別に「特に意識しておきたいポイント」を整理しておきます。細かい持ち物リストは行き先やクライミングのスタイル(ボルダリングかロープクライミングか)によって変わるため、ここでは荷造りの考え方の骨格だけを示します。
- 1国内出張のついでにジムへ1回だけ寄る場合:新幹線や飛行機の預け荷物とは別に、普段のジムバッグをそのまま持っていくスタイルで十分対応できることが多いです。ただし機内持ち込みにする場合は、チョークの量を控えめにし、透明な袋に入れておくと検査でスムーズです。
- 2数日間の遠征でジム巡りをする場合:スーツケースまたは中型ダッフルに、隔離用キューブでチョーク・シューズをまとめ、現地用のサブバッグを1つ忍ばせておくと、宿泊先とジムの往復が身軽になります。行きの荷物には余裕を持たせ、帰りの重量増加に備えておきましょう。
- 3ロープ・ギア一式を含む外岩合宿・海外遠征の場合:大容量ダッフルバッグを軸に、金属ギアやロープは預け荷物へ、シューズは万一のロストバゲージに備えて機内持ち込み側へ分散させます。TSAロックで施錠し、出発前にラゲッジスケールで重量を確認しておくと、空港での慌ただしさをかなり減らせます。
忘れ物より「余計な足止め」に注意
国内のジム巡りであれば、多少の忘れ物は現地で調達したりレンタルしたりできる場合があります。一方で、重量オーバーや保安検査でのひっかかりは、その場での対応に時間がかかり、移動そのもののスケジュールを崩しかねません。出発前のチェックは「忘れ物がないか」だけでなく「空港でスムーズに通過できるか」という視点でも行うことをおすすめします。
よくある質問
Qチョークは機内に持ち込めますか?
A粉末チョークは持ち込み自体は可能なことが多いですが、保安検査のX線画像で不審な粉末として見え、追加確認を求められることがあります。特に海外の空港ではこの傾向が強いとされています。液体チョークは機内持ち込みの液体量規定(多くの場合100ml以下の容器)の対象になる点にも注意してください。心配な場合は、チョーク類は預け荷物にまとめてしまうのが確実です。
Qカラビナやクイックドローは機内に持ち込めますか?
A金属製の登攀ギアは、刃物に準ずる扱いを受けて機内持ち込みを制限されることがあります。基本的には預け荷物に入れる前提で考えたほうが安全です。航空会社や就航国によって扱いが異なるため、心配な場合は事前に利用する航空会社の公式サイトで確認してください。
Q預け荷物の重量オーバーを防ぐにはどうすればいいですか?
A出発前に自宅で荷物全体を吊り下げ式の携帯用スケール(ラゲッジスケール)で量っておくのが確実です。空港のカウンターで初めて重量オーバーに気づくと、その場での荷物の詰め替えや追加料金の支払いが必要になります。行きは荷物に余裕を持たせ、帰りの荷物が増えることも見込んでおくとよいでしょう。
QTSAロックはどんなときに必要ですか?
Aアメリカを発着・経由する便で預け荷物を利用する場合、保安検査のために施錠を解かれる可能性があります。通常の南京錠だと検査官によって壊されることがあるため、TSAロック対応の南京錠を使うと、施錠したまま検査を受けられます。ソフトタイプのダッフルバッグの場合は、ジッパーの引き手に取り付けられる南京錠タイプを別途用意する必要があります。
Qクライミングシューズは預け荷物と機内持ち込み、どちらに入れるべきですか?
Aどちらでも問題ありませんが、預け荷物が万一届かなかった場合に備えて、シューズだけは機内持ち込み側に入れておくという考え方もあります。荷物がロストバゲージになっても、最低限クライミングだけは現地でできる、という安心材料になります。
Qダッフルバッグとスーツケース、どちらが向いていますか?
Aロープなど不定形でかさばる荷物が多い場合や、未舗装のアプローチを歩く可能性がある場合は、生地が伸びて詰めやすく、背負って運べるダッフルバッグが向いています。ジム中心の旅行で、移動が舗装路・屋内中心であれば、キャスター付きのスーツケースでも問題ありません。
Q現地用のサブバッグは必ず用意すべきですか?
A必須ではありませんが、宿泊先とジム・岩場を電車やバスで往復するスタイルの旅行では、身軽に動けるという点で用意する価値があります。すでに普段使いのパッカブルバッグを持っている場合は、それを流用しても問題ありません。
迷ったらこれ|この記事のNo.1

THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)BCダッフル XL ブラック NM82365-K
参考価格 26,310円
向いている人:ロープや装備一式を含めた外岩合宿・長期のクライミング遠征に行く人
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