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ボルダリングジムに通い始めて半年、1年と経つと、SNSや動画で「トラッドクライミング」や「外岩デビュー」という言葉を目にする機会が増えてきます。ジムのリード壁でクイックドローの練習を重ねたクライマーの中には、次のステップとして「ボルトが打たれていない岩を、自分でプロテクション(支点)を置きながら登る」トラッドクライミングに憧れを持つ人も少なくありません。ですが、ここで初めて出会うのが「ナッツ」と「カム」という、ジムでは触ったことのない道具です。岩の割れ目(クラック)に金属の塊を差し込んで支点にするという発想そのものが、クイックドローをボルトにクリップするだけのジムクライミングとは大きく異なり、「そもそもどういう仕組みで安全なのか」「サイズはどうやって選ぶのか」「予算はどれくらいかかるのか」と、疑問だらけになってしまう人が多いはずです。この記事では、ナッツとカムという2つの代表的なナチュラルプロテコション(自然物を利用しない、岩の形状を利用した支点道具)について、仕組みの違いからサイズ表記の読み方、最初の1セットを揃えるときの考え方までを、これからトラッドクライミングに触れてみたい人の視点でやさしく整理しました。最後には、実店舗でもよく見かけるナッツセット・カムセット4点も比較しています。
この記事でわかること
- ナッツとカムは「岩の隙間を利用する支点」という点で共通している
- なぜジムのクライマーがナッツ・カムに興味を持つのか
- 「ナッツ」の読み方 — サイズ表記と選び方の基本
- 「カム」の読み方 — サイズ表記・軸の種類・トリガーキーパー
- ナッツとカム、どちらから揃えるべきか
- 選び方の3ステップ
トラッドクライミング入門に候補になりやすい4点
ここでは実際に選んだ候補を紹介します。先にお断りしておくと、これらを買えば安全にトラッドクライミングができるという話ではなく、必ず講習や経験者の指導のもとで正しい使い方を学んだうえで使用してください。いずれもメーカー公式または正規取扱店の商品ページで案内されている製品の中から、ナッツ・カムそれぞれで価格帯や特徴の異なる4点を選びました。表示している価格は記事作成時点の参考価格です。変わることがあります。購入前に商品ページで最新の価格・在庫を確認してください。
4点を並べると、役割がはっきり分かれているのが分かります。ブラックダイヤモンドのストッパーセットとDMMのウォールナッツは、いずれもナッツの代表的なシリーズで、サイズ体系や価格帯を比較しながら選べます。ブラックダイヤモンドのキャメロットC4とワイルドカントリーのゼロフレンズは、いずれもカムの代表的なシリーズで、標準サイズ中心のC4か、細いクラック向けのゼロフレンズかで役割が分かれます。
予算を抑えて最初の1セットを揃えたいなら、まずブラックダイヤモンドのストッパーセット#4〜13を基準に検討するのが分かりやすい選び方です。ナッツの扱いに慣れてきたら、講習や経験者のアドバイスをもとに、キャメロットC4を#0.5〜#3あたりから少しずつ買い足していくという進め方が、多くのトラッドクライミング講習で案内されている考え方に沿っています。DMMのウォールナッツやワイルドカントリーのゼロフレンズは、ブラックダイヤモンドとは異なるメーカーの選択肢として、操作感やサイズ体系を比較したい段階で検討してみてください。
価格だけで見ると、ナッツのセットのほうがカムよりも手頃に見えるかもしれません。ただし、実際のトラッドクライミングではナッツとカムを組み合わせて使う場面が多く、どちらか一方だけで十分ということはほとんどありません。最初はナッツを中心に揃え、経験と予算に応じてカムを買い足していくという段階的な進め方が、多くの入門者にとって現実的な選択とされています。
また、今回紹介した4点はいずれも正規取扱店の商品ページで案内されているものですが、ナッツ・カム選びに唯一の正解はありません。登る予定のエリアのクラックの傾向や、講習で指定されるサイズ、予算によって、揃えるべき組み合わせは人それぞれ変わります。可能であれば、講習やジムのスタッフ、経験者に相談しながら、自分の状況に合った組み合わせを見つけてください。

ブラックダイヤモンド ストッパー セット #4〜13 BD11100
参考価格19,910円(10個セット)
ナッツの定番モデル「ストッパー」の#4〜#13までとホットワイヤー(黒いワイヤー仕様)をまとめた10個セット。トラッドクライミング入門で最初に揃えるナッツセットとして案内されることが多い、代表的な組み合わせです。
ここが良い
- #4〜#13という、トラッドクライミング入門でよく使われるサイズ帯がまとまっており、単品で買い揃える手間がかからない
- サイズごとにカラーが異なり、ラッキング時にサイズを識別しやすい
- ナッツの中でも広く使われている定番モデルのため、講習や経験者からの情報を参考にしやすい
注意点
- 可動部のあるカムに比べると単価は安いが、10個セットでまとまった出費になる
- 在庫状況によっては欠品していることがあり、購入前に商品ページで確認が必要

ブラックダイヤモンド キャメロットC4(単品・サイズ選択式) BD1090x
5.00(1件のレビュー)
参考価格12,980円〜(サイズにより価格が異なる)
世界的に定番とされるカム「キャメロットC4」の単品モデル。2019年にデザインが一新され、耐久性を保ちながら軽量化されたとされています。#0.3〜#6までサイズを選んで購入でき、大きいサイズにはトリガーキーパーも搭載されています。
ここが良い
- サイズを1本ずつ選んで購入できるため、講習で指定されたサイズや、行き先のトポで必要なサイズから優先的に買い足せる
- 長年にわたり広く使われている定番モデルで、経験者に相談しながら選びやすい
- 大きいサイズにはトリガーキーパーが搭載され、携行時にかさばりにくい
注意点
- 1本あたりの価格はナッツより高く、複数サイズを揃えると出費がかさみやすい
- サイズごとに価格が異なるため、購入前に商品ページで対象サイズの価格を確認する必要がある

DMM ウォールナッツ 11個セット(No.1〜11)
参考価格30,892円(11個セット)
英国の登山・クライミング用品ブランドDMMのナッツ「ウォールナッツ」を、1番から11番までまとめた11個セット。ブラックダイヤモンドのストッパーと並んで広く使われている、もう一つの代表的なナッツシリーズです。
ここが良い
- No.1〜11の全サイズがまとまっており、幅広いクラック幅に対応しやすい
- ブラックダイヤモンドとは異なる欧州ブランドの選択肢として、形状や利き方の違いを比較検討しやすい
- 在庫数が明記されており、購入前に在庫状況を確認しやすい
注意点
- 11個フルセットのため、初めての1セットとしては出費がまとまりやすい
- ブラックダイヤモンドのストッパーとサイズ体系が異なり、他のナッツと混在させる場合は対応関係の把握が必要

ワイルドカントリー ゼロフレンズ(単品・サイズ選択式)
参考価格17,050円〜(サイズにより価格が異なる)
定番カム「フレンズ」のマイクロバージョン。市場でも特に細いヘッドを特徴とし、浅い設置や細いクラック・ポケットへの対応に向くとされるモデルです。0.1〜0.75までの6サイズから選んで購入できます。
ここが良い
- 市場でも細いヘッドを特徴とするモデルで、大きいサイズのカムでは対応しにくい細いクラックやポケットに対応しやすい
- ブラックダイヤモンドとは異なるメーカーの選択肢として、カムローブの利き方や操作感を比較できる
- サイズを1本ずつ選べるため、必要なサイズだけ買い足していける
注意点
- 小型サイズが中心のため、幅広いクラックには別途大きいサイズのカムが必要になる
- 1本あたりの価格は標準サイズのカムと同程度かやや高めで、複数本揃えると出費がかさみやすい
■ スペック比較表
| 商品 | ブラックダイヤモンド ストッパー セット #4〜13 B… | ブラックダイヤモンド キャメロットC4(単品・サイズ選択… | DMM ウォールナッツ 11個セット(No.1〜11) | ワイルドカントリー ゼロフレンズ(単品・サイズ選択式) |
|---|---|---|---|---|
| 参考価格 | 19,910円(10個セット) | 12,980円〜(サイズにより価格が異なる) | 30,892円(11個セット) | 17,050円〜(サイズにより価格が異なる) |
| 購入 | ||||
| サイズ展開 | #4〜#13(10個セット) | #0.3〜#6(単品でサイズ選択) | No.1〜No.11(11個セット) | 0.1/0.2/0.3/0.4/0.5/0.75(単品でサイズ選択) |
| 強度 | #4・#5=6kN/#6〜#13=10kN | #0.3=8kN/#0.4=9kN/#0.5=12kN/#0.75〜#6=14kN | No.1=7kN(縦)/4kN(横)、No.2以降=9〜12kN | — |
| 重量 | #4=16g 〜 #13=71g(サイズごとに異なる) | #0.3=70g 〜 #6=530g(サイズごとに異なる) | — | — |
| 対応クラック幅 | 約6.9mm(#4最小)〜約35.1mm(#13最大) | 約13.8mm(#0.3最小)〜約195.0mm(#6最大) | — | — |
| メーカー型番 | BD11100 | — | — | — |
| 販売元 | BaseCamp OnlineShop 楽天市場店 | BaseCamp OnlineShop 楽天市場店 | アルパインローズ(登山用品専門店) | BaseCamp OnlineShop 楽天市場店 |
| トリガーキーパー | — | #4・#5・#6に搭載 | — | — |
| セット総重量 | — | — | 約429g(11個合計の目安) | — |
| ブランド | — | — | DMM(英国) | — |
| 軸構造 | — | — | — | シングルアクスル |
| ステム | — | — | — | ステンレススチール製スウェージ+フレキシブルメタルスプリング保護 |
| スリング | — | — | — | 10mm伸縮可能なダイニーマスリング |
| 認証 | — | — | — | EN 12276、UIAA 125 |
※ 表は横にスクロールできます。仕様は販売ページの記載にもとづく目安です。
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ナッツとカムは「岩の隙間を利用する支点」という点で共通している
ジムのリード壁やスポートルート(ボルトが打たれた外岩ルート)では、あらかじめ岩やクライミングウォールに打ち込まれたボルトにクイックドローをかけて支点にします。一方、トラッドクライミング(トラディショナルクライミング)では、岩そのものに存在するクラック(割れ目)やポケットに、クライマー自身が道具を差し込んだり噛ませたりして支点を作りながら登ります。この「自分で支点を作る」という発想の道具の代表格が、ナッツとカムです。
ナッツは、台形やくさび形をした金属の塊にワイヤーやコードが通された、可動部のないシンプルな道具です。クラックの幅が狭くなっている部分に差し込み、下方向に荷重がかかると、くさび効果でクラックの側面に食い込んで抜けにくくなる仕組みになっています。構造が単純なぶん壊れにくく、価格も比較的手頃なため、トラッドクライミングを始める人が最初に触れる道具として案内されることが多い道具です。
カムは、バネの力で開いたり閉じたりする複数のカムローブ(羽根状のパーツ)を持つ、可動式の道具です。トリガーを引くとカムローブが縮み、クラックの中に入れてトリガーを離すと、バネの力でカムローブが広がってクラックの側面に圧着します。荷重がかかる方向にかかわらず、平行なクラックにもしっかりホールドできるのが特徴で、ナッツでは対応しにくい形状のクラックにも設置しやすいとされています。ただしバネや可動部を含む精密機構であるぶん、ナッツよりも価格が高くなる傾向があります。
つまり、ナッツは「くさびの原理」でクラックの狭まった部分に引っかける道具、カムは「バネの力」で平行なクラックにも圧着させる道具、という違いがあります。どちらか一方だけを使うのではなく、実際のトラッドクライミングでは、登るルートのクラックの形状に応じてナッツとカムを組み合わせて使うのが一般的です。
この記事のスタンス
ナッツやカムは、正しい設置ができていなければ本来の強度を発揮できず、墜落時に抜けてしまう危険がある保安用具です。この記事はあくまで「選び方の基礎知識」の整理であり、実際の設置方法・強度判断(利き方の見極め、荷重方向の想定など)については、必ず経験者の同行やトラッドクライミング講習を通じて、実地で学んでください。独学だけでトラッドクライミングを始めるのは避けるべきです。
なぜジムのクライマーがナッツ・カムに興味を持つのか
ボルダリングジムやリード壁での練習は、ムーブや持久力を鍛える場としては優れていますが、トラッドクライミングとはまったく異なる技術体系が必要になります。それでもジムのクライマーがトラッドギアに興味を持つ理由はいくつかあります。
まず単純に、外岩の魅力に触れたいという動機です。トラッドクライミングのエリアは、スポートルートよりも自然な岩の造形を活かしたラインが多く、支点を自分で作りながら登るという行為そのものに、ジムでは味わえない緊張感と達成感があるとされています。ジムで基礎的なムーブを身につけたクライマーが、次のステップとして外岩の世界に踏み出したくなるのは自然な流れです。
また、トラッドギアの知識は、外岩のスポートクライミングでも役に立つ場面があります。たとえば懸垂下降用の支点構築や、緊急時に岩の隙間を利用して簡易的な支点を作る場面など、直接トラッドクライミングをしなくても、ナッツやカムの基本原理を知っておくことが安全マージンにつながるとされています。
ただし、ナッツやカムの扱いは、クイックドローをボルトにクリップするのとは比べ物にならないほど奥が深い技術です。「この形のクラックにはこのサイズのカムが利く」「このナッツの利き方は浅い(信頼性が低い)」といった判断は、座学だけで身につくものではなく、経験者に実際のクラックで指導してもらいながら、時間をかけて習得していくものです。この記事で紹介する知識は、あくまで「道具を選ぶための最低限の予備知識」であり、これだけでトラッドクライミングに挑戦できるという意味ではない点を、あらかじめご理解ください。
「ナッツ」の読み方 — サイズ表記と選び方の基本
ナッツは、多くのメーカーで1番から11番、あるいは0番から13番といった具合に、番号(サイズ)ごとに厚み・幅・対応するクラック幅が決まっています。商品ページには番号ごとの強度(kN)、重量(g)、対応クラック幅(mm)が表になっていることが多く、数字の意味を理解しておくと選びやすくなります。
番号が小さいほど薄く・軽く、細いクラックに対応します。逆に番号が大きいほど厚みがあり、幅の広いクラックに使います。ナッツは単体で使うことはほとんどなく、複数のサイズをひとまとめにした「セット」として販売されていることが多いのが特徴です。最初の1セットとしては、5番〜11番程度をカバーする、よく使われるサイズ帯のセットから検討するのが一般的とされています。
強度は、メーカーや番号によって6kN〜12kN程度の幅があります。番号が小さい(薄い)ナッツほど強度が低くなる傾向があり、これは薄いナッツほど金属の断面積が小さくなるためです。細いクラックにしか使えない小さいサイズのナッツは、そもそも強い墜落荷重がかかりにくい場面(体重を大きく預けない、補助的な支点として使う)を想定して設計されている側面もあります。
また、ナッツにはワイヤーの硬さにも種類があります。硬めのワイヤーは差し込む際の操作性が良い一方、しなやかさに欠けてクラックの奥まで押し込みにくい場合があります。逆に柔らかいワイヤーは奥まで押し込みやすい反面、狙った位置に正確に設置する感覚がつかみにくいと感じる人もいます。この違いは実際に手に取ってみないと分かりにくい部分なので、ジムのスタッフや経験者に相談できる場合は、実物の操作感を確認してみることをおすすめします。
「カム」の読み方 — サイズ表記・軸の種類・トリガーキーパー
カムは、ナッツよりも構造が複雑なぶん、商品ページに書かれている情報量も多くなります。ここでは初心者がまず押さえておきたい「サイズ表記(拡張範囲)」「軸の種類(シングルアクスル/ダブルアクスル)」「トリガーキーパー」の3点を整理します。
カムのサイズは、番号(#0.3、#1、#2……)で表記され、それぞれに「拡張範囲(最小mm〜最大mm)」が設定されています。カムローブが縮んだ状態の最小幅から、目一杯広がった状態の最大幅までの間であれば、そのクラックに設置できるという意味です。番号が小さいほど細いクラック向け、番号が大きいほど幅の広いクラック向けになります。最初にどの番号から揃えるかは、実際に登る予定のエリアの情報(トポやガイドブック)を参考にするのが確実ですが、一般的には#0.5〜#3程度の中間サイズがもっとも出番が多いとされています。
軸の種類には、カムローブが1本の軸に取り付けられた「シングルアクスル」と、2本の軸に分かれて取り付けられた「ダブルアクスル」があります。ダブルアクスルは、1つのカムでより広い拡張範囲をカバーできるという利点があり、近年の主力モデルの多くがこの方式を採用しています。シングルアクスルはやや構造がシンプルで、モデルによっては軽量に仕上げやすいという側面もあります。
トリガーキーパーは、カムローブを縮めた状態(トリガーを引いた状態)でロックしておける機構です。大きいサイズのカムはカムローブが縮んだ状態でもかさばりやすく、ハーネスのギアループに携行する際にトリガーキーパーがあると、コンパクトにまとめやすくなります。#4以上の大きいサイズのカムを検討する際は、この機構の有無も確認しておくと携行時の扱いやすさが変わってきます。
なお、カムには「シングルステム(1本のワイヤーやスリング)」と「Uステム(U字型に分かれたステム)」の違いもあります。Uステムは、荷重方向が横や斜めになった場合でもステムが柔軟に追従しやすいとされ、近年の主力モデルの多くがこの方式に近い柔軟なステム構造を採用しています。この点も、購入前に商品ページの説明で確認しておくとよいでしょう。
ナッツとカム、どちらから揃えるべきか
限られた予算の中で、ナッツとカムのどちらから先に揃えるべきか迷う人は多いはずです。ここでは一般的に案内されやすい考え方を整理します。
■ ナッツから揃えるメリット
価格がカムよりも手頃で、可動部がないぶん壊れにくく、メンテナンスの手間も少ないとされています。トラッドクライミング講習の多くが、まずナッツの設置練習から始めることが多いのも、構造がシンプルで「利き方」の原理を理解しやすいためです。予算を抑えて最初の1セットを揃えたい人には、ナッツのセットから検討するのが分かりやすい選択とされています。
■ カムから揃えるメリット
平行なクラックなどナッツでは利きにくい形状にも対応でき、設置・回収のスピードも比較的速いとされています。ただし価格が高く、1本あたり1万円台前半〜が目安になるため、必要な本数を揃えるとナッツよりも予算がかさみやすい点は理解しておく必要があります。
■ 現実的な進め方
多くのトラッドクライミング講習やガイドブックでは、まずナッツのセットを1つ揃え、講習や経験者との同行を通じて基本的な設置技術を身につけてから、カムを少しずつ買い足していくという進め方が案内されています。最初からすべてのサイズを完璧に揃える必要はなく、経験を積みながら少しずつ買い足していくという考え方で十分です。
選び方の3ステップ
ここまでの知識を踏まえて、実際にナッツ・カムを選ぶ手順を大きく3つに分けて整理しました。
- 1自分の現在地を把握する。まだトラッドクライミングの講習を受けたことがない段階であれば、いきなり道具を揃えるより先に、ジムや山岳会が開催するトラッドクライミング講習に参加することを優先してください。道具の使い方は、実際のクラックで経験者から手ほどきを受けるのが、もっとも安全で確実な学び方です。
- 2講習で使うサイズ帯を確認する。講習によっては、あらかじめ「このサイズ帯のナッツ・カムを用意してください」と案内されることがあります。指定がある場合はそれに従い、指定がない場合は、まずナッツの5〜11番程度のセットと、カムの#0.5〜#3程度の中間サイズから検討するのが無難な目安です。
- 3正規販売店で新品を購入する。ナッツやカムは保安用具であり、使用歴や落下荷重の経験が分からない中古品はリスクが高いとされています。可能な限り、メーカー公式または正規取扱店の商品ページで、最新の価格・在庫・仕様を確認したうえで購入することをおすすめします。
色分けラッキングの習慣を早めに身につける
ナッツ・カムともに、多くのモデルはサイズごとに異なるカラーのワイヤーやスリングが使われています。ハーネスのギアループにサイズ順・色順で並べてラッキングする習慣を早めに身につけておくと、実際のクライミング中に必要なサイズを素早く選び出せるようになります。講習の初期段階から意識しておくと、後々の上達が早まるとされています。
購入前・使用前に必ず確認しておきたいこと
ナッツやカムは、正しい判断と設置ができて初めて本来の性能を発揮する道具です。ここでは、購入前・使い始める前に知っておきたい注意点を整理します。
まず大前提として、ナッツやカムの「利き方」を見極める技術は、書籍や記事を読むだけでは身につきません。同じクラックでも、荷重がかかる方向やクラックの奥行き、岩質によって、適切なサイズや向きは変わります。この判断を誤ると、見た目には設置できているように見えても、実際に荷重がかかったときに簡単に抜けてしまうことがあります。必ず経験者の同行やトラッドクライミング講習を通じて、実地で判断力を養ってください。
カムは可動部を持つ精密機構であるため、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。使用後は水洗いと乾燥を行い、可動部の動きが渋くなっていないか、カムローブの表面に摩耗や変形がないかを確認する習慣をつけてください。動きが渋くなった場合は、メーカーが推奨する専用の潤滑剤を使う、あるいはメーカーやショップに相談することが推奨されています。一般的な油性の潤滑油(自転車用や自動車用など)は、砂やチョークの粉を吸着して逆に動きを悪化させる場合があるとされ、使用は避けたほうが無難です。
ナッツ・カムともに、大きな落下荷重がかかった経験のあるものは、目に見える損傷がなくても内部にダメージが蓄積している可能性があります。判断に迷う場合は自己判断せず、メーカーやショップ、経験者に相談してください。また、フリマアプリなどで販売されている中古品は、使用履歴や落下荷重の経験が分からないことが多く、保安用具としては推奨されません。可能な限り正規販売店で新品を購入することをおすすめします。
座学と実地はセットで
この記事で紹介した内容は、あくまで道具を選ぶ際の予備知識です。ナッツ・カムの実際の設置技術、荷重方向の見極め、支点の強度判断といった実践的なスキルは、必ずトラッドクライミング講習や経験者の指導を通じて、実際のクラックで時間をかけて学んでください。座学の知識だけでトラッドクライミングに挑戦することは避けるべきです。
よくある質問
Qナッツとカム、初心者はどちらから揃えればいいですか?
A多くのトラッドクライミング講習やガイドブックでは、まずナッツから揃えることが案内される傾向にあります。ナッツは可動部がなく構造がシンプルで、価格も比較的手頃なため、「利きの原理」を理解する入り口として扱いやすいとされています。ナッツの扱いに慣れてきたら、講習や経験者のアドバイスをもとにカムを買い足していく進め方が現実的です。
Qナッツやカムだけを買えば、いきなりトラッドクライミングを始められますか?
Aいいえ。ナッツやカムの正しい設置方法や利き方の見極めは、書籍や記事を読むだけでは身につきません。判断を誤ると、見た目は設置できていても実際の荷重に耐えられない場合があります。必ずトラッドクライミング講習に参加するか、経験者の指導のもとで実地に学んでから挑戦してください。
Qカムのサイズはどの番号から揃えればいいですか?
A一般的には、#0.5〜#3程度の中間サイズがもっとも出番が多いとされています。ただし実際にどのサイズが必要かは、登る予定のエリアのクラック傾向によって変わるため、行き先のトポ(ルート図)や講習での案内を優先して確認することをおすすめします。
Qナッツとカムは中古で買ってもいいですか?
Aナッツやカムは保安用具であり、使用履歴や落下荷重の経験、可動部の劣化状況が分からない中古品はリスクが高いとされています。特にカムはバネなどの可動部を含む精密機構のため、可能な限り正規販売店で新品を購入することをおすすめします。
Qカムのメンテナンスで気をつけることはありますか?
A使用後は水洗いと乾燥を行い、可動部の動きが渋くなっていないか定期的に確認してください。一般的な油性の潤滑油は砂やチョークの粉を吸着して逆に動きを悪化させる場合があるとされ、動きが気になる場合はメーカー推奨の潤滑剤を使うか、メーカーやショップに相談するのが無難です。
QブラックダイヤモンドとDMM、ワイルドカントリーはどう違いますか?
Aいずれもトラッドクライミング用品で広く使われているブランドで、基本的な仕組みは共通していますが、サイズ体系やヘッドの形状、カムローブの角度などに違いがあります。どのブランドが自分に合うかは、実際に手に取って操作感を確かめるか、経験者の意見を参考にするのが確実です。
Q予算はどれくらい見ておけばいいですか?
Aナッツのセット(5〜11個程度)は1万5,000〜3万円程度、カムは1本1万2,000〜2万円程度が目安です。最初にナッツのセットを1つ揃え、その後カムを1本ずつ買い足していく進め方であれば、初期費用を抑えながら少しずつ装備を充実させていくことができます。
迷ったらこれ|この記事のNo.1

ブラックダイヤモンド ストッパー セット #4〜13 BD11100
参考価格 19,910円(10個セット)
向いている人:これからトラッドクライミング講習を受ける予定で、最初のナッツセットを1つにまとめて揃えたい人
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