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ボルダリングジムに通い始めて数ヶ月が経つと、「壁を登る技術」以前に「ホールドを持ち続ける力が足りない」という壁にぶつかる人は少なくありません。同じグレードの課題でも、周りの人がすっと保持できているホールドを自分だけ弾かれてしまう。そんな経験から「握力さえあれば」「指の力をもっと鍛えたい」と考え、自宅用のフィンガーボードや懸垂ホールドを検索し始めた人も多いのではないでしょうか。ただし、クライミングにおける指力トレーニングは、筋トレの中でもとりわけ怪我のリスクが高い分野でもあります。指の腱や靭帯は筋肉に比べて回復が遅く、「もっと追い込みたい」という気持ちのまま自己流でフィンガーボードを使い始めると、腱鞘炎や指の靭帯損傷(いわゆる「パーリー損傷」)につながりやすいことが、クライミング障害に関する複数の研究や指導書で指摘されています。この記事では、なぜクライミングに握力・指力トレーニングが重要なのか、どこから手をつければ安全に力を伸ばせるのか、そして自宅トレーニング用の器具をどう選べばよいのかを、初心者〜中級者向けに整理しました。最後には初心者にも選ばれやすい器具4点も紹介します。
この記事でわかること
- なぜ「握力」ではなく「指力」を考える必要があるのか
- 初心者がまず伸ばすべきなのは「握力」より「登る回数」
- フィンガーボード・ハングボード・ロックリングス・キャンパスボードの違い
- デッドハングの基本 — フィンガーボードの安全な使い方
- 中級者向け — 保持力を伸ばす基本メニューの考え方
- 見落とされがちな「拮抗筋」と「回復」の重要性
この記事で比較する商品
自宅トレーニング用おすすめ器具4選
これより、実際に候補となったアイテムを紹介します。あらかじめ言っておくと、これらの器具を使えば必ず握力が伸びる、指力が上がる、という保証をするものではありません。使い方やトレーニング頻度、個人の体質によって効果には差があります。いずれもメーカー・ブランドの商品ページで案内されているスペックをもとに、役割の異なる4点を選びました。掲載価格は記事作成時点の参考値です。時期によって上下することがあります。購入前に商品ページで最新の価格・在庫を確認してください。
4点を並べると、役割がはっきり分かれていることが分かります。プライムリブは指先の保持力そのものを鍛える基本のフィンガーボード、ロックリングスは携帯性を活かしたウォームアップ・サブ器具、キャンパスブロックは経験を積んだ人向けの上級トレーニング器具、キャプテンズオブクラッシュは握力全体の土台を底上げする補助器具という個性を持たせています。
クライミング歴が半年未満で、初めて自宅トレーニング用の器具を検討しているのであれば、まずはプライムリブのようなフィンガーボード1台から始め、正しいフォームでのデッドハングに慣れることを優先するのが無難です。キャンパスブロックは、保持力と体幹の基礎ができてから検討するステップアップ用の器具と考えてください。
また、器具のスペックだけでなく、自宅の設置環境(ドア枠の強度、天井高、落下時の安全確保)も購入前に必ず確認してください。特にキャンパスボードは動作中に手が滑って落下する可能性があるため、下にマットを敷く、十分な高さを確保するなど、安全対策を整えたうえで導入することをおすすめします。

メトリウス(Metolius) プライムリブ 木製フィンガーボード
参考価格7,700円
3通りの掛かり具合(38mmインカット、20mmフラット、15mmフラット)を選べるシンプルな木製ハングボード。幅がコンパクトで狭い場所にも設置しやすく、表面が滑らかに仕上げられているため、指皮の減りを気にせず使いやすいとされています。初めてフィンガーボードを導入する人向けのエントリーモデルです。
ここが良い
- 3種類のエッジ形状を1枚で使い分けられ、初心者から中級者まで長く使いやすい
- 木製で表面が滑らかに仕上げられており、指皮への負担を抑えやすいとされる
- コンパクトなサイズで、ドア枠や限られたスペースにも設置しやすい
注意点
- エッジの種類がシンプルな分、様々な持ち方を試したい中〜上級者にはやや物足りない場合がある
- 設置には壁またはドア枠へのビス留めが必要で、賃貸住宅では設置方法を工夫する必要がある

メトリウス(Metolius) ロックリングス 3D
参考価格7,700円
どこにでも携帯できる懸垂ホールドのベストセラーとされる、吊り下げ式のトレーニング器具。ジャグ・インカット・フラット・ポケットの4通りの持ち方に対応しており、ウォームアップにも軽いトレーニングにも使いやすいとされています。2個1セットでの販売です。
ここが良い
- 固定設置が不要で、旅行先や実家など様々な場所に持ち運んで使いやすい
- 4通りの持ち方に対応しており、フィンガーボードのウォームアップとしても使いやすい
- 2個セットのため、左右の手でバランスよくトレーニングできる
注意点
- 吊り下げる場所(懸垂バーやフックなど)を別途用意する必要がある
- フィンガーボードほど細かいエッジのバリエーションはなく、専門的な保持力トレーニングにはやや不向き

メトリウス(Metolius) キャンパスブロック M(2個セット)
参考価格1,650円(+送料550円)
セパレイト式のキャンパシング用木製ホールド。127mm幅のキャンパスラングで、S・M・L・XL・2XL・3XLの6サイズ展開があり、このMサイズは奥行25mm。平行取り付けのほか、ハの字に配置してセット幅を広げることもできます。
ここが良い
- セパレイト式のため、間隔や配置を自分の体格・目的に合わせて調整しやすい
- 6段階のサイズ展開があり、レベルに応じてラングの奥行を選べる
- 取り付け穴が開いた状態で届くため、DIYでの設置がしやすい
注意点
- キャンパストレーニング自体が指・肩への負荷が非常に大きく、初心者には推奨されない
- 設置には十分な強度の壁面と、安全に落下を受け止められるスペースの確保が必要
アイアンマインド(IronMind) キャプテンズオブクラッシュ ハンドグリッパー
4.80(206件のレビュー)
参考価格4,850円
アメリカ・アイアンマインド社の握力強化器具。航空機にも使われるアルミニウムを素材とし、ローレット加工により滑りにくく仕上げられています。ガイド(27kg相当)からナンバー4(166kg相当)まで11段階の強度から選べ、握力そのものの底上げやウォームアップに使われることが多いモデルです。
ここが良い
- 11段階と強度の選択肢が非常に幅広く、初心者からトップアスリートレベルまで対応できる
- 掲載時点でレビュー件数206件・評価4.80と、使用者の評価を確認しやすい
- 場所を選ばず、通勤・通学中や外出先でも手軽に握力トレーニングができる
注意点
- 手のひら全体で握る力の強化が中心で、クライミングに特有の指先の保持力(フィンガーストレングス)を直接鍛えるものではない
- 自分の握力に対して強すぎる強度を選ぶと、握れずに終わってしまい効果を得にくい
■ スペック比較表
| 商品 | メトリウス(Metolius) プライムリブ 木製フィン… | メトリウス(Metolius) ロックリングス 3D | メトリウス(Metolius) キャンパスブロック M(… | |
|---|---|---|---|---|
| 参考価格 | 7,700円 | 7,700円 | 1,650円(+送料550円) | 4,850円 |
| 購入 | ||||
| サイズ | 51cm×10cm×4cm(幅×高さ×奥行) | — | — | — |
| エッジ形状 | 38mmインカット/20mmフラット/15mmフラットの3種 | — | — | — |
| 素材 | 木製 | — | — | アルミニウム(ローレット加工) |
| 付属品 | 設置用ビス | — | — | — |
| メーカー型番 | ME14014 | ME14007001 | — | — |
| 販売元 | メトリウス(Metolius) | メトリウス(Metolius) | メトリウス(Metolius) | アイアンマインド(IronMind) |
| 内容 | — | 2個1セット | 2個セット | — |
| 重量 | — | 約1.9kg(1ペア) | — | — |
| 持ち方 | — | ジャグ/インカット/フラット/ポケットの4通り | — | — |
| 取り付け方法 | — | ロープ・スリング等で吊り下げ | — | — |
| 長さ | — | — | 127mm(ラング幅) | — |
| 奥行(Mサイズ) | — | — | 25mm | — |
| サイズ展開 | — | — | S/M/L/XL/2XL/3XLの6種 | — |
| 取り付け | — | — | 穴開け済・取り付けビス付属 | — |
| 強度レベル | — | — | — | 11段階(ガイド27kg相当〜ナンバー4 166kg相当) |
| バネ | — | — | — | GR8特殊バネ採用 |
| 主な用途 | — | — | — | 握力強化・リハビリ・ウォームアップ |
※ 表は横にスクロールできます。仕様は販売ページの記載にもとづく目安です。
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なぜ「握力」ではなく「指力」を考える必要があるのか
クライミングを始めたばかりの人が「握力を鍛えよう」と考えるのは自然なことです。ただし、クライミングで実際に使われている力は、いわゆる一般的な「握力計で測る握力」とは性質が少し異なります。握力計は手のひら全体で丸いものを握りつぶす力を測定しますが、クライミングのホールドを持つ動作の多くは、指の第一関節・第二関節を曲げて薄いエッジやポケットに指先を引っかける「保持力(フィンガーストレングス)」と呼ばれる力が中心になります。
この保持力は、指を曲げるための前腕の筋肉(屈筋群)だけでなく、指の骨をつなぐ靭帯や、腱を骨に固定している「腱鞘(プーリー)」と呼ばれる組織の強さにも大きく左右されます。筋肉は比較的短期間のトレーニングでも強くなりますが、腱や靭帯は血流が少なく、筋肉よりもゆっくりとしか強くならない組織だとされています。つまり、握力(筋力)は数週間で伸びても、それを支える指の腱や靭帯の強さが追いついていない状態でトレーニングを続けると、筋肉の力に腱がついていけず、怪我につながりやすくなるということです。
ジムで「今日は少し指が張っているな」と感じたまま無理に強傾斜の課題に挑戦したり、自宅のフィンガーボードで痛みを我慢しながらぶら下がり続けたりする行為は、まさにこのミスマッチを広げる典型的な行動パターンとされています。特に、クライミング歴が浅く筋力の伸びを実感しやすい時期ほど、腱や靭帯の準備が整う前に強度の高いトレーニングに手を出してしまいがちです。
この記事で扱う「握力・指力トレーニング」は、単に握力計の数値を伸ばすことではなく、クライミングの動作に近い形で「指の保持力」と、それを支える腱・靭帯の耐久性を、怪我をしない範囲で段階的に強くしていくことを指しています。派手なトレーニングメニューよりも、まずは「安全に継続できる土台」を作ることを優先して読み進めてください。
この記事のスタンス
トレーニング効果や怪我のリスクには個人差があり、断定的な効果を保証するものではありません。持病がある方、指や前腕に痛みがある方、クライミング経験が浅く自己流でのトレーニングに不安がある方は、無理に自宅トレーニングを始めず、ジムのスタッフやスポーツ整形外科などの専門家に相談することをおすすめします。
初心者がまず伸ばすべきなのは「握力」より「登る回数」
結論から言うと、ボルダリングを始めて半年に満たない初心者のうちは、フィンガーボードなどの器具を使った専門的な指力トレーニングよりも、ジムで実際に登る回数と時間を増やすことのほうが、保持力の向上に直結しやすいとされています。
クライミングの保持力は、指の筋力だけでなく「どの角度でホールドを持てば力が伝わりやすいか」「体重をどう壁にかければ指への負担を減らせるか」といった技術面の影響を強く受けます。初心者のうちに保持力が足りないと感じる場面の多くは、実は指の力そのものが不足しているのではなく、ホールドの持ち方や体の使い方が最適化されていないことが原因であるケースが少なくありません。技術が伴わないまま指の力だけを鍛えても、実際の登攀でその力を発揮しきれないことがあります。
また、器具を使ったトレーニングは腱や靭帯に一気に強い負荷をかけやすい一方、ジムで課題に取り組む中で自然にかかる負荷は、様々な角度・様々な持ち方に分散されるため、腱への負担が比較的まんべんなく分散されやすいという指摘もあります。指導書の多くが「フィンガーボードでの専門的なトレーニングは、クライミング経験がある程度(目安として半年〜1年以上)ついてから」と案内しているのは、こうした理由からです。
目安として、週に2〜3回ジムに通い、様々な角度・持ち方の課題に取り組める段階になってから、この記事で紹介するような器具を使ったトレーニングを補助的に取り入れる、という順番で考えるのが無難です。「早く強くなりたい」という気持ちは理解できますが、指の腱は一度傷めると数ヶ月単位で登れなくなることもある部位です。急がば回れ、という言葉がもっとも当てはまる分野の一つだと考えてください。
フィンガーボード・ハングボード・ロックリングス・キャンパスボードの違い
自宅トレーニング用の器具を探し始めると、「フィンガーボード」「ハングボード」「ロックリングス」「キャンパスボード」など似たような名前の道具がいくつも出てきて混乱しやすいものです。ここではそれぞれの役割の違いを整理しておきます。
この中で、初心者〜中級者がまず検討するべきなのはフィンガーボード(ハングボード)です。ロックリングスは携帯性を活かしたサブ的な位置づけ、キャンパスボードは明確に上級者向けの器具と考えて、段階を踏んで選ぶことをおすすめします。
■ フィンガーボード/ハングボード
壁やドア枠に固定する板状の器具で、様々な深さ・形状のエッジ(かかり)が並んでいます。基本的な使い方は、目的のエッジにぶら下がって一定時間キープする「デッドハング」と呼ばれるトレーニングです。日本語では両方の呼び方が使われますが、指す対象はほぼ同じものと考えて問題ありません。指先の保持力そのものを鍛える、もっとも基本的な器具です。
■ ロックリングス(携帯型ハング器具)
ロープやスリングで吊り下げて使う、持ち運びできるハンドホールド型の器具です。ジャグ(大きく持ちやすい形状)からポケットまで複数の持ち方ができるものが多く、固定式のフィンガーボードほど専門的でない分、ウォームアップや旅行先での軽いトレーニングに使われることが多いとされています。設置場所を選ばない手軽さが特徴です。
■ キャンパスボード/キャンパスブロック
足を使わず、腕と指の力だけで木製のラング(横木)を上下に移動しながら登る、上級者向けの器具です。爆発的な引きつけの力(ダイナミックな動き)を鍛えるためのもので、指や肩への負荷がきわめて大きく、クライミング歴が浅いうちや、基礎的な保持力・体幹の強さが十分でないうちに使うと、怪我のリスクが特に高いとされています。初心者〜中級者は基本的に手を出さないほうが無難な器具です。
デッドハングの基本 — フィンガーボードの安全な使い方
フィンガーボードを使った代表的なトレーニングが「デッドハング」です。ぶら下がるだけのシンプルな動作に見えますが、正しいフォームと負荷設定を知らずに始めると、指を痛める確率が大きく上がります。
まず重要なのが、指の「オープンハンド」と呼ばれる持ち方です。指の第一関節を大きく曲げ込む「クリンプ」と呼ばれる持ち方は、少ない力で強い保持力を得やすい反面、指の腱にかかる負荷が非常に大きく、初心者が最初に取り組むと怪我のリスクが高いとされています。フィンガーボードでのトレーニングを始める段階では、指を大きく曲げ込まず、なだらかに関節を保ったまま持つオープンハンドを基本のフォームにすることが、多くの指導書で推奨されています。
負荷の設定も重要です。いきなり全体重でぶら下がるのではなく、足を床や台に乗せて体重の一部を支えながら、少しずつ手にかける負荷を増やしていく方法が安全とされています。自重の何割かをかけた状態から始め、痛みが出ないことを確認しながら段階的に負荷を上げていくイメージです。
時間の目安としては、1回あたり7〜10秒程度のぶら下がりを、休憩を挟みながら数セット行う方法が紹介されることが多いです。長時間ぶら下がり続けることよりも、「短時間・高強度・十分な休憩」の組み合わせのほうが、腱への負担を抑えながら効果を得やすいと考えられています。頻度についても、指のトレーニングは毎日行うものではなく、週2回程度に留め、間の日はしっかり回復させることが推奨されています。
何より大切なのは「痛みのサイン」を無視しないことです。ぶら下がっている最中や翌日に、筋肉の張りとは違う、関節や腱に近い部分の鋭い痛みや違和感を感じたら、その日のトレーニングはすぐに中止し、数日から1週間程度は完全に休ませる判断が必要です。「あと少しだけ」という気持ちが、長期の離脱につながることを覚えておいてください。
ウォームアップを省略しない
指のトレーニングは、体が温まっていない状態でいきなり行うと怪我のリスクがさらに高まるとされています。軽い有酸素運動で全身を温めたあと、ロックリングスや弱いエッジでの軽いぶら下がりを数セット行い、指の血流を上げてから本格的なトレーニングに移るのが基本的な流れです。
中級者向け — 保持力を伸ばす基本メニューの考え方
ジムに半年〜1年以上通い、様々な角度・持ち方の課題に取り組めるようになってきた中級者であれば、フィンガーボードを使ったより体系的なトレーニングを検討する段階に入ってきます。ここでは代表的な考え方を紹介します。
これらのメニューはあくまで代表的な考え方であり、体力や経験、目標とするグレードによって最適な組み合わせは変わります。自己流で強度を上げすぎるより、可能であればジムのコーチやトレーニング経験者に相談しながら、自分のレベルに合ったメニューを組むことをおすすめします。
また、指力トレーニングだけに偏らず、前腕・上腕・肩・体幹をバランスよく鍛えることも重要です。クライミングの動作は指の力だけで完結するものではなく、体幹で姿勢を安定させ、肩や背中の力でホールドに向かって体を引きつける、複数の筋群の連動によって成り立っています。指のトレーニングに熱中するあまり、他の部位のトレーニングをおろそかにしないよう意識してください。
- 1最大握力に近い負荷を短時間キープする「マックスハング」。7〜10秒程度のぶら下がりを、十分な休憩(2〜3分程度)を挟みながら3〜5セット行う方法です。純粋な保持力の向上を狙ったメニューで、フォームが崩れない範囲の負荷設定が重要とされています。
- 2一定時間ぶら下がりと休憩を繰り返す「リピーター」。7秒ぶら下がって3秒休む、というサイクルを複数回繰り返すことで、持久力に近い保持力を鍛える方法です。マックスハングよりもやや負荷を落とし、回数を重ねる形で行われます。
- 3エッジの深さやホールド形状を変えながら行う「バリエーショントレーニング」。同じ深さのエッジばかりを使うのではなく、深いエッジ・浅いエッジ・スローパー(傾斜のあるホールド)など複数の形状を組み合わせることで、実際のクライミングに近い多様な保持力を鍛えられるとされています。
見落とされがちな「拮抗筋」と「回復」の重要性
クライミングのトレーニングというと、指を握る・曲げる方向の力(屈筋)ばかりに注目が集まりがちですが、それと逆方向に働く「拮抗筋」のケアも、怪我の予防という観点では同じくらい重要です。
クライミングでは指を曲げてホールドを握る動作が中心になるため、指を曲げる屈筋群ばかりが強化され、指を開く・伸ばす方向の伸筋群とのバランスが崩れやすいとされています。このアンバランスが、前腕の張りや、肘の外側に痛みが出る「クライマーズエルボー」と呼ばれる症状につながることがあるとも言われています。輪ゴムを指にかけて開く運動や、専用のエクステンサートレーナーと呼ばれる器具を使って、屈筋と伸筋のバランスを意識的に整えることが、怪我の予防策として紹介されることが多いです。
もう一つ見落とされがちなのが「回復」そのものをトレーニングの一部として扱う考え方です。指の腱や靭帯は、負荷をかけている最中ではなく、負荷をかけたあとの休息期間に強くなっていくとされています。トレーニングの頻度を詰め込みすぎると、強くなる前に次の負荷がかかってしまい、かえって腱を弱らせる結果になりかねません。フィンガーボードでのトレーニングを行った日は、翌日を完全休養日にするか、指に負担のかからない軽い有酸素運動程度に留めるといった計画性が、長期的に見ると上達の近道になります。
睡眠や栄養も回復に影響する要素です。特にタンパク質の摂取は筋肉だけでなく、腱の材料となるコラーゲンの合成にも関わるとされています。トレーニングの内容そのものだけでなく、生活習慣全体を「回復を後押しする方向」に整えることも、怪我をせずに長く続けるためには欠かせない視点です。
指の怪我のサインと、痛みが出たときの対応
指力トレーニングを続けるうえで、怪我のサインを早期に見抜けるかどうかは、長くクライミングを続けられるかどうかを大きく左右します。ここでは代表的な症状と、痛みが出たときの基本的な考え方を紹介します。
指の第一関節・第二関節の付け根あたりに、押すとピンポイントで痛む箇所がある、または「ポン」というような弾けるような感覚とともに急な痛みが出た場合は、指の腱を骨に固定している靭帯(プーリー)を痛めている可能性があるとされています。この状態で登り続けると、悪化して長期の離脱につながることがあるため、痛みを感じた時点でその日のクライミング・トレーニングは中止し、安静にすることが基本的な対応とされています。
一方で、トレーニングの翌日に前腕や指全体が「筋肉痛のように張っている」程度の感覚であれば、通常の筋肉疲労である可能性が高く、数日の休養で回復することが多いとされています。ただし、痛みが1週間以上続く場合や、日常生活での指の動きにも支障が出る場合は、自己判断で様子を見続けず、整形外科やスポーツクリニックを受診することをおすすめします。
怪我をしてしまった場合、痛みが引いたからといってすぐに元の強度でトレーニングを再開するのは避けたほうが無難です。負傷した組織は見た目の症状が引いたあとも、内部の回復が追いついていないことがあるとされ、段階的に負荷を戻していく「リハビリテーション」の考え方が重要になります。可能であれば、クライミング障害に詳しい医療機関やトレーナーに相談しながら復帰の計画を立てることをおすすめします。
「痛気持ちいい」は危険信号
トレーニング中に「痛いけれど気持ちいい」「もう少しならいけそう」と感じる感覚は、追い込みすぎているサインであることが多いとされています。クライミングの指トレーニングにおいては、筋肉痛と関節・腱の痛みを混同せず、後者を感じた時点で即座に中止する判断力が、怪我を防ぐ上でもっとも重要なスキルの一つです。
よくある質問
Qクライミング歴が浅くてもフィンガーボードを使ってもいいですか?
A目安として、クライミング歴が半年に満たないうちは、フィンガーボードなどの専門的な指力トレーニングよりも、ジムで実際に登る回数を増やすことを優先したほうが安全とされています。指の腱や靭帯は筋肉よりゆっくりとしか強くならず、経験が浅い段階で強い負荷をかけると怪我のリスクが高まります。使う場合は、負荷を軽くし、痛みが出ないか慎重に確認しながら少しずつ取り入れてください。
Qデッドハングはどのくらいの頻度で行えばいいですか?
A指のトレーニングは毎日行うものではなく、週2回程度に留め、間の日はしっかり回復させることが多くの指導書で推奨されています。回復が不十分なまま頻度を詰め込むと、腱がかえって弱ってしまう可能性があるとされています。
Qクリンプ(指を深く曲げる持ち方)とオープンハンドはどちらで練習すべきですか?
Aクリンプは少ない力で強い保持力を得やすい一方、指の腱への負荷が非常に大きく、初心者が最初に取り組むと怪我のリスクが高いとされています。フィンガーボードでのトレーニングを始める段階では、指をなだらかに保つオープンハンドを基本のフォームにすることが推奨されています。
Qキャンパスボードはいつから使い始めていいですか?
Aキャンパスボードは足を使わず腕と指の力だけで登る、上級者向けの器具です。基礎的な保持力・体幹の強さが十分でないうちに使うと怪我のリスクが特に高いとされ、目安としてクライミング歴が長く、フィンガーボードでのトレーニングに十分慣れてから検討するのが無難です。
Qハンドグリッパー(キャプテンズオブクラッシュなど)だけでクライミングの保持力は伸びますか?
Aハンドグリッパーは手のひら全体で握る力の強化が中心で、クライミングに特有の指先の保持力(フィンガーストレングス)を直接鍛えるものではないとされています。握力全体の土台づくりやウォームアップとしては有効ですが、クライミングの保持力向上を主目的にするなら、フィンガーボードでのトレーニングと組み合わせるのがおすすめです。
Q指に痛みを感じたらどうすればいいですか?
Aピンポイントで押すと痛む箇所がある、または急な痛みを感じた場合は、その日のトレーニング・クライミングをすぐに中止し安静にすることが基本とされています。痛みが1週間以上続く、日常生活の指の動きにも支障が出るといった場合は、自己判断せず整形外科やスポーツクリニックの受診をおすすめします。
Q指のトレーニングと同時に鍛えたほうがいい部位はありますか?
A指を曲げる屈筋群だけでなく、指を開く・伸ばす方向の伸筋群や、体幹・肩まわりの筋力もバランスよく鍛えることが重要とされています。屈筋ばかりが強化されると前腕の張りや肘の痛み(クライマーズエルボー)につながることがあるとも言われており、拮抗筋のケアも怪我の予防に役立つとされています。
迷ったらこれ|この記事のNo.1

メトリウス(Metolius) プライムリブ 木製フィンガーボード
参考価格 7,700円
向いている人:これから初めてフィンガーボードでのトレーニングを始めたい人
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