ラリーが続くようになってきたのに、相手のボールに押されて浅くなる、深く沈めたつもりのショットがネットを越えるだけで精一杯——そんな壁にぶつかっていないでしょうか。フォームが安定してくると、次に気になるのは「もっと飛ばしたい」「もっと弾道を高く、深く沈めるスピンをかけたい」という欲求です。ただ、パワーやスピンを引き出すラケットには、それを生かせるスイングスピードや振り方が前提としてあり、誰にでも同じように効果が出るわけではありません。この記事では、パワーとスピンに関わるオープンストリングパターン・ヘッドサイズ・スイングスピードとの相性を順番に整理し、実際に候補になりやすい4本も比較します。
この記事でわかること
- 「もっと飛ばしたい」「もっと沈めたい」と感じ始めたら
- パワーとスピンを分けて生む3つの設計要素
- ストリングパターン(ガット目)の読み方 — オープンほどスピンがかかりやすい
- ヘッドサイズ(フェイス面積)の読み方 — 大きいほど飛ぶが、操作性とのトレードオフ
- いちばん見落とされがちな「スイングスピードとの相性」
- サーブの威力・キックスピンやボレーとの関係
最終更新:
パワー・スピン重視のテニスラケット4選
ここからは実際の候補です。いずれもメーカーの商品ページ上で「パワー系」「スピン系」として案内されている、あるいはオープンなストリングパターンと広めのヘッドサイズを組み合わせたモデルを中心に、価格帯やブランドが異なる4本を選びました。価格は記事作成時点の参考価格で、変動する場合があります。購入前に商品ページで最新の価格・在庫・選べるグリップサイズを確認してください。
4本を並べると、ヘッドサイズと価格帯で役割が分かれているのが分かります。HEADはヘッドサイズ115平方インチと最も大きく、飛びとミスへの寛容性を最優先したモデル。バボラはヘッドサイズを100平方インチに抑えつつ、スピン性能を前面に押し出したモデル。ウイルソンはパワーとスピンのバランスを取ったモデル。テクニファイバーは、ガット張り上げ済みで価格を抑えながらパワー系を試せるモデル、という位置づけです。
どれが合うかは、スイングスピードと、パワー・スピンのどちらをより優先したいかによって変わります。非力さやスイングスピードの遅さが気になるなら1本目、スピン量を積極的に増やしたいなら2本目、パワーとスピンを両方バランスよく底上げしたいなら3本目、まずは価格を抑えて試したいなら4本目、という選び方をすると失敗しにくいでしょう。
なお、HEAD・バボラ・ウイルソンの3本はいずれもフレームのみの販売で、ガット代・張り上げ工賃が別途必要になります。予算を検討する際は、フレーム価格に加えて数千円程度のガット代がかかることも念頭に置いておいてください。テクニファイバーはガット張り上げ済みのため、この点では総額を把握しやすいモデルです。
価格・仕様は変動するため、購入前に必ず商品ページで最新情報を確認してください。また、可能であれば同じスペック帯のラケットを店頭やレンタルで試打してから決めると、自分のスイングとの相性をより確かめやすくなります。
通販サイトでは「並行輸入品」として、正規代理店を通さない商品が販売されていることもあります。価格が安く見える場合がありますが、メーカー保証の対象外になることが多く、ガット張り替えなどのアフターサービスを受けられない場合もあります。今回紹介した4本はいずれも国内の販売店による商品ページを基準にしていますが、購入時は商品ページに「正規品」「メーカー保証」の記載があるかも確認しておくと安心です。
■ スペック比較表
| 商品 | ヘッド(HEAD) Speed PWR 2024 硬式テ… | バボラ(Babolat) PURE AERO 硬式テニス… | ウイルソン(Wilson) DEFYER 100UL V… | テクニファイバー(Tecnifibre) T-FIT 2… |
|---|---|---|---|---|
| 参考価格 | 33,462円(フレームのみ、ガット代別) | 32,560円(フレームのみ、ガット代別・長期保管の新古品) | 31,680円(フレームのみ、ガット代別) | 11,550円(メーカー希望小売価格23,100円、ガット張り上げ済み) |
| フェイス面積 | 115平方インチ | 100平方インチ | 100平方インチ | 100平方インチ |
| 全長 | 27.4インチ | 27.0インチ(685mm) | — | — |
| 平均重量 | 255g(フレームのみ、目安) | 300g(±7g、ストリングなし) | 265g | — |
| フレーム厚 | 26-26-28mm | 23.0〜26.0mm(23-26-23mm) | 23.75-25-23mm | — |
| バランス | 345mm | 平均320mm(±7mm) | — | — |
| ストリングパターン | 16×19 | 16×19 | 16×19 | — |
| グリップサイズ | G1/G2 | G2 | G1/G2 | G1/G2 |
| 素材 | グラファイト+グラフィン | グラファイト | — | カーボン(グラファイト) |
| レングス | — | — | 27インチ | — |
| 平均バランス | — | — | 33.0cm(330mm) | — |
| 重さ | — | — | — | 290g |
| バランスポイント | — | — | — | 320mm |
| ストリング | — | — | — | 張り上がり(シンセティックガット130・ブラック) |
| 付属品 | — | — | — | カバーなし |
※ 表は横にスクロールできます。仕様は販売ページの記載にもとづく目安です。
※ 価格・在庫は変動します。最新情報は各ストアでご確認ください。当サイトはアフィリエイトプログラムを利用しています。
「もっと飛ばしたい」「もっと沈めたい」と感じ始めたら
スクールやサークルでラリーが安定してくると、今度は「相手のボールに押されて浅くなる」「深く沈めたつもりのショットが浅く返ってしまう」という悩みが出てきます。これは技術だけの問題とは限らず、今使っているラケットがパワーやスピンを引き出しにくい設計になっている可能性もあります。
ここでいう「パワー」とは、同じスイングスピードでもボールがより速く・より遠くへ飛ぶ性質のこと、「スピン」とは主にトップスピン(上から下へのボールの回転)がかかりやすい性質のことを指します。どちらもラケット単体で生み出せるものではなく、あくまでプレーヤーのスイングを助ける・増幅する方向に働く要素とされています。すでにある程度スイングができている人が、その振りをより結果に結びつけやすくするための道具選び、と考えるとイメージしやすいでしょう。
この記事は、これからテニスを始める完全な初心者よりも、ある程度ラリーが続けられるようになった中級者以上の方を主な対象にしています。フェイス面積や重量といった基礎的なスペックの読み方については、当サイトの初心者向けラケット選びの記事でも扱っているため、ここではパワーとスピンに直結する「ストリングパターン」「ヘッドサイズ」「スイングスピードとの相性」を中心に掘り下げます。
先に断っておくと、ラケットを変えただけで劇的にスピン量が増えたり、急に速いボールが打てるようになったりするわけではありません。効果には個人差が大きく、フォームやスイングスピードが伴っていなければ、むしろ「暴れる」「コントロールしにくくなった」と感じることもあります。この記事では、そうした相性のズレをできるだけ避けるための考え方を中心に整理していきます。
なお、パワーやスピンを求める背景は人によって異なります。体格や筋力が伸びてきて今のラケットでは物足りなくなった、というケースもあれば、フォームが安定してきてもっと積極的に攻めたい、逆に非力さを感じていて楽に飛ばしたい、というケースもあります。この記事で紹介する考え方はどちらのタイプにも共通して使える基準ですが、自分がどちらの理由でこの記事にたどり着いたのかを意識しておくと、後半のスイングスピード別の分類がより自分ごととして読みやすくなるはずです。
目安として、テニスを始めてから半年〜1年ほど経ち、フォームや基本的なショットの打ち方がある程度固まってきた段階で検討し始める人が多いようです。フォームが固まる前にパワー・スピン系のラケットへ変えてしまうと、ラケットの特性に頼った打ち方の癖がついてしまうこともあるため、慌てて買い替える必要はありません。
この記事のスタンス
商品ごとの特徴は「〜とされる」「〜しやすい傾向がある」という表現にとどめています。パワー・スピン系ラケットの効果はスイングスピードやフォームによって大きく変わるため、断定はできません。可能であれば購入前に試打し、自分のスイングとの相性を確かめることをおすすめします。
パワーとスピンを分けて生む3つの設計要素
パワーとスピンは似たような言葉に聞こえますが、ラケットの設計上は別の要素が効いています。主に関わるのは「ストリングパターン(ガット目の粗さ)」「ヘッドサイズ(フェイス面積)」「フレーム厚」の3つで、それぞれがパワー寄り・スピン寄りのどちらに効きやすいかが異なります。
ストリングパターンは、ボールがガットにどれだけ食い込み、めり込んだガットがどれだけ動くかに関わる要素です。ガットの間隔が広い「オープンパターン」ほどボールが食い込みやすく、ガットが横方向に動く量(スナップバック)も大きくなるとされ、これがスピン量に直結すると言われています。パワーとスピンのうち、より直接的に「スピン」に効くのがこの要素です。
ヘッドサイズは、単純にボールが当たる面積が広いか狭いかという話に加えて、フェイスが大きいほどテコの原理でヘッドスピードが出やすくなり、同じ力で振ってもボールの初速が上がりやすいとされています。こちらは主に「パワー」側に効く要素です。フェイス面積が大きいラケットを俗に「パワー系」と呼ぶのは、このためです。
フレーム厚は、ラケットの反発力そのものに関わります。フレームが厚くしなりが少ないほど、インパクトのエネルギーロスが少なく、ボールが飛びやすいとされています。パワー・スピン系のモデルでは、この厚みがヘッドサイズやストリングパターンと組み合わさって、より飛びやすい・回転がかかりやすい設計になっていることが多いです。
ここで重要なのは、この3つはどれも「ボールに何をするかを助ける」要素であって、「プレーヤーの代わりにボールを飛ばしてくれる」わけではないという点です。次の項目から、それぞれをもう少し詳しく見ていきます。
なお、重量やグリップサイズもボールの飛び方に関わる要素ですが、これらは当サイトの初心者向けラケット選びの記事で基礎から説明しているため、この記事では割愛します。パワー・スピンを底上げしたい人の多くは、すでに自分に合う重量帯やグリップサイズの感覚を持っていることが多いため、まずはストリングパターンとヘッドサイズの調整から検討するのが効率的です。
また、これら3つの要素は独立して選べるわけではなく、メーカーによって組み合わせ方に個性があります。「パワー」を全面に押し出したモデルは大きめのヘッドサイズと厚めのフレームを組み合わせることが多く、「スピン」を前面に押し出したモデルは、ヘッドサイズを抑えつつストリングパターンを極端にオープンにする、という組み合わせが目立ちます。商品名や商品説明にある「パワー系」「スピン系」といった表現も、こうした設計思想の違いを表していると考えると理解しやすくなります。
ストリングパターン(ガット目)の読み方 — オープンほどスピンがかかりやすい
ストリングパターンは「16×19」「18×20」のように、縦糸(メイン)×横糸(クロス)の本数で表記されます。数字が小さいほどガットの間隔が広い「オープンパターン」、大きいほど間隔が狭い「密なパターン」です。パワー・スピンを重視するモデルの多くは16×19、あるいはメインを16本に保ちながらクロスを19本より減らした16×18や16×15といった、よりオープンなパターンを採用しています。
オープンパターンでは、インパクトの瞬間にガットが横方向にたわみ、ボールが離れるときに元の位置に戻ろうとする「スナップバック」という現象が起きやすいとされています。このスナップバックがボールに回転を加える力になり、強いトップスピンがかかりやすい、と一般的に説明されています。ラケット選びで「スピン系」と紹介されているモデルの多くは、この16×19前後、あるいはさらにオープンなパターンを採用しています。
一方でオープンパターンにはトレードオフもあります。ガットが動く量が多いぶん、方向性がぶれやすい、耐久性が下がりやすい(ガットが切れやすい)とされることが多く、狙った場所に正確に打ち出したいコントロール重視のプレーヤーには不向きとされる場合もあります。18×20のような密なパターンは、ガットが動きにくいぶんスピンはかかりにくいものの、打ち出した方向にそのまま飛びやすい、耐久性が高いといった特徴があるとされています。
とはいえ、パターンの数字だけでスピン量が決まるわけではありません。同じ16×19でも、ガットのゲージ(太さ)や素材(ポリエステル、ナイロンなど)によって、実際のスナップバックの起きやすさは変わります。細めのポリエステルガットを合わせるとスピン性能がさらに引き出しやすいと言われる一方、切れやすさも増すため、練習量や予算とのバランスも考えておく必要があります。
また、ストリングパターンがオープンなラケットほど、ガットを緩めのテンションで張るとさらにボールが食い込みやすくなり、スピンと飛びの両方が強調される傾向があります。逆に「飛びすぎる」「浮きすぎる」と感じる場合は、ラケット本体を替える前に、まずテンションをやや高めに張り直してみるだけでも体感が変わることがあります。
ラケット本体のパターンを変えずにスピン性能だけを引き出したい場合、メインとクロスで異なる種類のガットを組み合わせる「ハイブリッド張り」という方法もあります。たとえばメインにポリエステル、クロスにナイロン系を組み合わせると、スピンのかかりやすさと打感の柔らかさを両立しやすいとされています。ラケット本体を買い替える前の中間的な選択肢として、覚えておくと役立つ場合があります。
ガットの太さも、スピンのかかりやすさに影響する要素の一つです。一般的に「1.25mm」のように表記されるゲージが細いほど、ガットが伸び縮みしやすくスピンをかけやすいとされる一方、切れやすくなる傾向があります。逆に太いゲージは耐久性が高く、初めてポリエステル系ガットを試す人にも扱いやすいとされています。ストリングパターンとあわせて、ガットのゲージも選択肢の一つとして覚えておくとよいでしょう。
ヘッドサイズ(フェイス面積)の読み方 — 大きいほど飛ぶが、操作性とのトレードオフ
フェイス面積は「平方インチ」で表され、100平方インチ前後を標準として、105〜118平方インチ程度を「パワー系」「オーバーサイズ」と呼ぶのが一般的です。数値が大きいほどテコの原理でヘッドスピードが出やすく、同じスイングでもボールが飛びやすい、ミスヒットしても失速しにくいとされています。
パワーが欲しいからといって、闇雲に大きいフェイスを選べばよいわけではありません。フェイスが大きいラケットは、その分フレーム自体の空気抵抗も増え、振り抜くのに必要な力(スイングウェイト)が変わってきます。すでに速いスイングができるプレーヤーが大きいフェイスのラケットを使うと、パワーが乗りすぎて逆にコントロールしづらくなる、というケースも珍しくありません。
目安として、105〜110平方インチ程度は「パワーは欲しいが操作性もある程度残したい」という人に選ばれやすい範囲、115平方インチを超えるモデルは、より非力なプレーヤーや、とにかく飛びとミスへの寛容性を優先したい人向けとされることが多いです。すでに100平方インチ前後のラケットを使っていて物足りなさを感じている場合は、まず105〜110平方インチ程度への変更から試してみるのが無難かもしれません。
また、ヘッドサイズが大きくなると、ラケット全体の長さやバランスポイント(重心位置)によっては、サーブやボレーで面が安定しにくく感じることもあります。グラウンドストロークでのパワー・スピンを重視して選んだラケットが、ネットプレーとの相性で妥協点になる場合もあるため、自分のプレースタイルの中でどの場面を最優先したいかを先に決めておくと選びやすくなります。
今のラケットのヘッドサイズが分からない場合は、フレームのどこかに小さく型番やスペックが印字されていることが多いので、そこから商品名を調べるとメーカーの公式サイトで数値を確認できます。今のラケットとの差を意識しながら候補を絞ると、「思っていたより違いが大きすぎた」という失敗を避けやすくなります。
友人やスクールの仲間が近いスペックのラケットを使っている場合は、練習前後に数球借りて打たせてもらうのも有効な方法です。実際の販売価格が数万円する商品を、購入前に無料で試せる貴重な機会になります。
いちばん見落とされがちな「スイングスピードとの相性」
ここまでストリングパターンとヘッドサイズを見てきましたが、パワー・スピン系ラケット選びで最も見落とされやすいのが、自分のスイングスピードとの相性です。同じラケットでも、振るスピードによって得られる効果はまったく変わってきます。
スイングスピードが速いプレーヤーがオープンパターン・大型ヘッドのラケットを使うと、スピンと飛びが強く乗りすぎて、コートの外に大きく外れる「吹っ飛ぶ」ような感覚になりやすいとされています。逆にスイングスピードがゆっくりなプレーヤーが密なパターン・小さめヘッドのコントロール系ラケットを使うと、ボールが飛ばず、スピンもかからず、余計に力んでしまうという悪循環に陥りやすいと言われます。
■ スイングスピードが遅め・非力さが気になるタイプ
フルスイングしてもボールがあまり飛ばない、力を入れてもスピンがかかっている実感が薄いという人は、ヘッドサイズ105平方インチ以上・オープンなストリングパターン(16×19またはそれ以上に開いたパターン)の組み合わせが合いやすいとされています。ラケット側がボールを飛ばす・回転させる方向を助けてくれるため、スイングに無理な力を加えずに結果を出しやすくなります。
■ 中程度のスイングスピードで、ある程度振れているタイプ
ラリーは安定しているが、もう少し威力やスピン量を増やしたいという人には、100〜105平方インチ程度のヘッドサイズに、16×19の標準的なオープンパターンを組み合わせたモデルが無難とされています。パワーとコントロールのバランスを崩さずに、スピン量だけをやや底上げしたい場合に選ばれやすい組み合わせです。
■ スイングスピードが速く、しっかり振り切れるタイプ
すでに速いスイングができる人が大型ヘッド・極端なオープンパターンのラケットを使うと、パワーとスピンが乗りすぎてコントロールを失いやすいとされています。この場合はヘッドサイズ98〜100平方インチ程度に抑えつつ、ストリングパターンだけをオープン寄りにする、という組み合わせのほうが、暴れすぎず必要なスピン量だけを引き出しやすい場合があります。
判断に迷ったら中程度のタイプを基準に
自分がどのタイプに近いかは、スピードガンなどの機材がなくても、普段のプレーの感覚から大まかに判断できます。「思い切り振ってもボールが失速する」と感じるなら遅め寄り、「軽く振っただけでコートの外に出やすい」と感じるなら速め寄りと考えてよいでしょう。判断に迷う場合は、中程度のタイプを基準に選び、実際に使いながら微調整していく方法でも十分です。
サーブの威力・キックスピンやボレーとの関係
ここまではグラウンドストローク(前後の打ち合い)を中心に説明してきましたが、パワー・スピン系のラケットはサーブやボレーにも影響します。特にセカンドサーブでキックサーブ(跳ねるように曲がりながら弾むサーブ)を使いたい人にとっては、無視できない要素です。
サーブは打点が高く、グラウンドストロークよりもラケットを大きく振り上げる動作になるため、ヘッドサイズが大きい・オープンなストリングパターンのラケットとの相性は比較的良いとされています。特にファーストサーブで威力を出したい、セカンドサーブでキックサーブの跳ね方を大きくしたいという人には、この記事で紹介しているようなパワー・スピン系のモデルが向いている場合があります。
一方で、サーブはグラウンドストロークよりも打点のコントロールがシビアな場面でもあります。トスの位置がわずかにずれただけでもフォルトにつながりやすく、パワーが乗りすぎるラケットに変えた直後は、狙った場所にサーブが入りにくくなると感じることもあるようです。サーブの調子が崩れたと感じたら、ラケットのせいと決めつける前に、まずトスの安定と打点の確認を優先してください。
ボレーとの兼ね合いにも触れておきます。ネットプレーでは、パワーよりも面の安定と操作性が優先される場面が多く、ヘッドサイズが大きすぎるラケットだと、とっさに面を合わせる瞬間の感覚がつかみにくいと感じる人もいます。グラウンドストロークでのパワー・スピンを重視しつつ、ネットプレーの頻度が高い人は、極端に大きいヘッドサイズよりも105〜110平方インチ程度を選んでおくと、両方の場面でバランスが取りやすいかもしれません。
キックサーブでよく使われる、ラケットを下から上へこすり上げるようなスイングは、ボールとガットの接触時間がグラウンドストロークよりもやや長くなる場面ともいわれ、オープンなストリングパターンのスナップバックが活きやすい動きの一つです。キックサーブの習得を目指している人にとっては、ストリングパターンの選び方が、フォームの練習と同じくらい意味を持ってくる場合があります。
選び方の3ステップ
ここまでの内容を踏まえて、実際にパワー・スピン系のラケットを選ぶ手順を3つのステップに整理しました。順番に沿って絞り込むと、スペック表の数字に振り回されずに候補を決めやすくなります。
焦って1本目から完璧なラケットを選ぼうとする必要はありません。特にパワー・スピン系のラケットは、同じスペックでもメーカーによって振ったときの印象が異なることが多く、実際に使ってみて初めて「合う・合わない」がわかる部分もあります。まずはこの3ステップで大きく外さない選択をして、使いながら微調整していくつもりで進めてください。
- 1自分のスイングスピードの傾向を大まかに把握する。前の項目で紹介した3タイプ(遅め・中程度・速め)のどれに近いかを、普段のプレーの感覚から判断します。自信がなければ、まずは中程度のタイプを基準に考えて問題ありません。
- 2ヘッドサイズとストリングパターンで候補を絞る。自分のタイプに合わせて、ヘッドサイズ98〜118平方インチ、ストリングパターン16×19前後を目安にモデルを3〜5本ほどリストアップします。この段階ではブランドやデザインより、まずスペックのレンジで機械的に絞り込むのがコツです。
- 3可能であれば試打する、あるいは似たスペックのラケットを使っている人の感想を探す。パワー・スピン系のラケットは、同じスペックでも実際に振ったときの体感がスイングによって大きく異なります。テニスショップの試打会や、スクールのレンタルラケットを利用できる場合は、購入前に必ず試しておくことをおすすめします。
ガットのテンションでも体感はかなり変わる
同じラケットでも、張るガットの種類やテンションによってパワー・スピンの出方は変わります。飛びすぎる場合はテンションをやや高めに、逆に飛びが物足りない場合はやや低めに調整するだけで、ラケットを買い替えなくても改善することがあります。ラケット選びと合わせて、ガットの張り替えも選択肢に入れておくと、より細かい調整がしやすくなります。
手に入れたあとに気をつけたいこと
パワー・スピン系のラケットに買い替えたら、そのまま今までと同じ感覚で使い始めるのではなく、いくつか気をつけておきたいポイントがあります。
まず、ガットのテンションです。パワー・スピン系のラケットは、標準的なテンションで張ると「飛びすぎる」「浮きすぎる」と感じることがあります。特にオープンなストリングパターンのモデルは、テンションを1〜2ポンド高めに設定するだけでも、飛びとコントロールのバランスが取りやすくなるとされています。購入時に張り上げを依頼する場合は、ショップのスタッフに「パワーが強めのラケットなので、少し高めのテンションで」と伝えてみるとよいでしょう。
次に、体への負担です。ヘッドサイズが大きいラケットやオープンなストリングパターンのラケットは、インパクトの衝撃の伝わり方が今までと変わることがあります。特にヘッドサイズが極端に大きいモデルへ買い替えた直後は、腕や肘に違和感が出ないか、しばらく様子を見ながら使うことをおすすめします。違和感が続く場合は、無理に使い続けず、テンションやグリップの調整、あるいは別のモデルへの見直しも検討してください。
また、パワー・スピン系のラケットに変えた直後は、今までよりボールが飛びすぎて、コート外に大きく外れるミスが増えることがあります。これは決してラケット選びが間違っていたわけではなく、新しい飛び方・回転のかかり方にスイングが慣れていないだけ、というケースがほとんどです。数回の練習で慣れてくることが多いので、最初のうちは無理に力を入れず、軽めのスイングで感覚をつかむようにするとよいでしょう。
最後に、ガットの種類についても触れておきます。同じラケットでも、ポリエステル系のガットに変えるとスピンがかけやすくなる、マルチフィラメント系のガットに変えると打感が柔らかくなるなど、ガットの素材によっても体感はかなり変わります。ラケット本体の買い替えを検討する前に、まずは今のラケットのガットを変えてみる、という選択肢も費用を抑えながら試せる方法の一つです。
オープンなストリングパターンのラケットは、ガットが動きやすいぶん、密なパターンに比べて耐久性がやや落ちる、つまりガットが切れやすい傾向があるとされています。練習量にもよりますが、今までよりガットの張り替え頻度が上がる可能性があることも、あらかじめ想定しておくと安心です。張り替えの目安や費用については、スクールやショップに相談してみるとよいでしょう。
パワー・スピン系のラケットへの買い替えは、多くの場合すぐに結果が出るものではなく、数週間から数か月かけて自分のスイングとラケットの特性がなじんでいくものだと考えておくと気持ちが楽になります。最初の数回で「合わない」と判断せず、練習の中で少しずつ感覚を確かめていくことをおすすめします。
ラケットを変えた前後でどう感じ方が変わったかを、スマートフォンのメモや練習ノートに簡単に記録しておくのもおすすめです。「最初の2週間は飛びすぎたが、3週目から慣れてきた」といった記録が残っていると、次にラケットやガットを見直すときの判断材料になります。感覚だけに頼らず、こうした記録を残しておく習慣も、長くテニスを続けていくうえで役立ちます。
よくある質問
Qオープンストリングパターンとは何ですか?普通のパターンと何が違いますか?
A縦横のガットの本数が少なく、間隔が広いストリングパターンのことです。「16×19」のように表記され、数字が小さいほどオープンな傾向にあります。ガットの間隔が広いぶんボールが食い込みやすく、スナップバックと呼ばれる現象でスピンがかかりやすいとされています。一方でガットが動く量が多いため、方向性がぶれやすい、耐久性が下がりやすいといった面もあります。
Qスイングスピードが遅めでも、パワー・スピン系のラケットは効果がありますか?
Aむしろスイングスピードが遅め・非力さが気になる人ほど、パワー・スピン系のラケット(大型ヘッド・オープンなストリングパターン)の恩恵を感じやすいとされています。ラケット側がボールを飛ばす・回転させる方向を助けてくれるため、無理に力を入れなくても結果を出しやすくなります。
Qヘッドサイズは大きければ大きいほど良いのですか?
A一概には言えません。ヘッドサイズが大きいほど飛びやミスへの寛容性は高まりやすいとされますが、フレーム自体の空気抵抗も増え、スイングスピードが速い人には「飛びすぎる」「操作しにくい」と感じられることもあります。自分のスイングスピードに合わせて、105〜118平方インチの範囲から選ぶのが目安です。
Qパワー系のラケットに替えたら、今までよりボールが外に出やすくなりました。おかしいですか?
Aよくあることで、ラケット選びが間違っているとは限りません。新しい飛び方・回転のかかり方にスイングがまだ慣れていないケースがほとんどです。数回の練習で慣れることが多いので、まずは軽めのスイングで感覚をつかみ、それでも改善しない場合はガットのテンションを高めに調整してみてください。
Qフレームのみの商品とガット張り上げ済みの商品、何が違いますか?
Aフレームのみの商品は、購入後に自分でガットの種類とテンションを選んで張ってもらう必要があります。自由度は高いですが、別途ガット代・張り工賃(数千円程度)がかかります。ガット張り上げ済みの商品は、届いてすぐに使い始められる代わりに、ガットの種類やテンションをあらかじめ選べないことが多いです。
Qストリングパターンを変えるだけで、ラケット本体は変えなくても効果はありますか?
A同じラケットのまま、張るガットの種類やテンションを変えるだけでも、パワーやスピンの出方はある程度変化します。ラケット本体のストリングパターン自体を変えることはできませんが、細めのポリエステル系ガットに変える、テンションを調整するといった方法で、費用を抑えながら近い効果を試すことができます。
Q予算はどれくらい見ておけばいいですか?
Aこの記事で紹介した4本では、ガット張り上げ済みのモデルで1万円台前半から、フレームのみのモデルで3万円台前半までと幅があります。フレームのみの場合は、別途ガット代・張り工賃が数千円程度かかる点も考慮しておくと、想定外の出費に驚かずに済みます。
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